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歯列を整えるマウスピース矯正で噛み合わせが悪化する?!|噛み合わせの悪化を防ぐ方法紹介

マウスピース矯正は、「取り外しが効く」「目立たない」「食事や会話の際に負担が少ない」ことなどから、近年需要が高まっています。

その一方で、マウスピース矯正は噛み合わせが悪化するという話も耳にしますが、実際のところはどうなのでしょうか?

結論、マウスピース矯正の適応症例に適切に使用すれば悪化しません。

この記事では、マウスピース矯正で噛み合わせが悪化するパターンと噛み合わせの悪化を防ぐ方法を紹介します。

噛み合わせが悪化する事例

マウスピース矯正は、取り外しが可能な上にマウスピース装着時に目立たない点から、近年需要が増えています。

一方で、マウスピース矯正は噛み合わせを悪化させるという事例もあります。

なぜマウスピース矯正で噛み合わせが悪くなってしまうのか、どうすれば悪化させずに矯正治療を終えられるのか解説します。

マウスピースが症状に合っていない

マウスピース矯正で噛み合わせが悪化したという事例は確かに存在します。

しかしそれは、マウスピース矯正そのものに問題があるわけではありません。

  • 噛み合わせを見るとワイヤー矯正するべきものを矯正時の見た目を考えてマウスピース矯正にした
  • 歯並びの審美的側面だけを重視した結果、噛み合わせが悪くなってしまった

など患者の見た目に関する意識から噛み合わせを悪化させるケースが多いようです。

噛み合わせを十分考慮せずに矯正治療を進めてしまうと、歯並びは綺麗になったけれど、上下の歯が上手く噛み合わないといった問題が起きることがあります。

マウスピース矯正は適応できない症例もある

マウスピース矯正は、比較的軽い症例に使用するのが一般的です。

歯並びが複雑で合ったり不正咬合の重い症例には適応しません

マウスピース作成時のシミュレーションの誤り

マウスピースの作成段階でマウスピースをした状態の顎の動きのシミュレーションにミスがあり、誤った位置に顎が動くように設計された際に起こるトラブルです。

このような誤ったマウスピースを長期間装着してしまうと取り返しのつかないトラブルが起きる危険性もあります。

審美面だけを追求しない

マウスピース矯正を始める際に、どんな歯並びにしたいかというゴールに誤りがある場合にトラブルが起こる可能性があります。

ゴールとする歯並びにおいて、あまりに審美面にこだわりすぎ、噛み合わせよりも見た目にの審美面を優先させた結果、噛み合わせが悪くなってしまうという可能性があります。

見た目もよく噛み合わせもいいという状態が理想の歯並びですが、見た目がどんなによくても本来の歯の目的である、食べ物を噛むという行為に支障があっては矯正した意味がありません

マウスピース矯正で噛み合わせが悪化する2つのタイミングと対処法

マウスピース矯正で嚙み合わせが悪くなるタイミングは、主に以下の2つです。

  • 矯正治療の途中で悪くなるパターン
  • 矯正が終わってから奥歯が噛まなくなってしまうパターン

それぞれの原因と対処法について解説します。

矯正治療の途中で悪くなるパターン

矯正治療の最中に噛み合わせが悪くなるのはマウスピース矯正に限られたことではありません。

歯列矯正では歯を動かすことが原因で、一時的に歯と歯がぶつかってしまい、噛み合わせに違和感をもたらせます。

対処法

対処法は、違和感に耐えて待つことが基本です。
なぜなら、矯正治療が進むにつれて多くの場合は症状が軽減していきます。

矯正途中に違和感をもつことはよくあるので、不安であれば担当の歯科医師に違和感を訴えて、治療の過程で起こる症状を確認してください。

矯正が終わってから奥歯が噛み合わなくなってしまうパターン

マウスピース矯正中には、マウスピースの厚みの分、奥歯が噛み合わさらない状態が長時間継続します。

そのため、マウスピースを外すと、慢性化した顎の動きからマウスピースの厚み分だけ隙間ができてしまった状態に慣れてしまい、奥歯が噛めない状態になります。

マウスピース矯正では、歯並びのシミュレーションはだけでなく、噛み合わせのシミュレーションも行っていますが、実際に人がものを食べるときの顎の動きまでは再現することは難しく歯科医師の技量に頼らざるを得ません。

よって、噛み合わせまで考慮して矯正計画を立てる歯科医師の経験と技術が重要となります。

対処法

個々の症例や歯科医師によって対処の方法が異なります。

<具体例>

  • 追加でワイヤーで修正する
  • 治療計画を修正する
  • あえてマウスピースをつける時間を短くする

などで噛み合わせを調整します。

次に、噛み合わせが悪いとどのような支障が起こるのか見ていきましょう。

噛み合わせが身体に及ぼす悪い影響

噛み合わせの良し悪しは、日常生活を送る上でとても重要なポイントとなります。

噛み合わせが悪いと以下のような症状を引き起こすとされています。

  • 顎関節症
  • 頭痛・肩こり
  • めまい・難聴
  • 虫歯・歯周病

顎関節症

顎関節症の症状としては以下のものが挙げられます。

  • 口を大きく開けることができない
  • 口を開けるときに音がする
  • 口は開くけど引っ掛かりを感じる
  • 顎を動かす筋肉に痛みを生じる

噛み合わせだけが顎関節症の原因ではありませんが、ひとつの要因とされています。

頭痛・肩こり

頭痛や肩こりの症状を訴える人は多く、症状の原因も様々ですが、噛み合わせが原因になっている症例も多く見られます。

噛み合わせが悪いと、顎周辺の筋肉が強張り血流が悪くなり、頭痛や肩こりなどの不調の要因となります。

めまい・難聴

噛み合わせが悪いと顎の関節や周囲の筋肉へ影響を与えます。

顎周囲の筋肉だけでなく顔面全体へと緊張が広がっていき、めまいや難聴に影響を及ぼす可能性があるとされています。

虫歯・歯周病

噛み合わせの悪さはそのまま歯並びの悪さに関係します。

歯並びが悪いと、歯間ブラシやデンタルフロスが上手く通せなかったりと歯と歯の間が磨きづらかったりするため、充分な口腔ケアができずに虫歯や歯周病の要因となります。

虫歯や歯周病は歯の健康寿命を縮め、歯を失ってしまう可能性が高くなります。
さらに、噛み合わせまで悪いと、歯にかかる負担が一部の歯だけに集中してしまい、歯の寿命に影響を及ぼします。

8020(ハチマルニイマル)運動 〜歯の寿命を伸ばすことの大切さ〜
1989年から厚生労働省と日本歯科医師会で「8020(ハチマルニイマル)運動」が推進されています。
これは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。
この運動は、生活の中でとても大切な食生活を支えるもので、20本以上の歯があれば食べることに支障がないという観点から推進しています。

では次に、そもそも噛み合わせとは何かを見ていきましょう。

そもそも噛み合わせとは

噛み合わせとは、上の歯と下の歯が接触する位置関係を示す言葉です。

噛むという動作はすごく繊細な感覚で行われ、0.1ミリのズレでも人は大きな違和感を感じてしまいます。

そのため矯正の際、歯並びだけの治療を行うだけでなく、上下の歯のバランスを考慮しなければなりません。

良い噛み合わせとは

歯列矯正治療でゴールとする「良い噛み合わせ」は人それぞれに適したものがあり、それを「個性正常咬合(こせいせいじょうこうごう)」と呼びます。

<個性正常咬合の条件>

  • 上下の歯の真ん中である正中(せいちゅう)が一致している
  • オーバージェットや、オーバーバイトが適切な範囲である

・オーバージェットとは、前歯を横から見たときに上の歯がどれだけ、下の歯よりも前にあるのかという指標のこと
・オーバーバイトは上の前歯が下の前歯に対してどれだけ覆いかぶさっているかの深さの指標のこと

悪い噛み合わせの種類&その悪影響

悪い噛み合わせは、下の歯が上の歯より前に出ていたり、上の歯が出すぎていたり、正常な咬合ではない状態で「不正咬合」と呼ばれています。

日本人の不正咬合に多く見られる6つのタイプを紹介します。

乱杭歯(らんぐいば)・八重歯

乱杭歯・八重歯は、歯がでこぼこに生え揃っている状態を言います。

乱杭歯・八重歯の両方を合わせて「叢生(そうせい)」と呼ばれています。

日本では八重歯はチャームポイントとして見られがちですが、欧米では治療すべき対象とされています。

<乱杭歯・八重歯が及ぼす悪影響>

  • 見た目、審美面が低下する
  • 食べ物を正常に噛むことができず消化器官に負担をかける
  • 歯の清掃性が低下し、口腔環境に悪影響が考えられます

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

一般的には「出っ歯」と呼ばれる症状です。

上顎前突とは前歯や歯ぐき、または顎全体が前に出すぎている状態を指します。

<上顎前突が及ぼす悪影響>

  • 見た目、審美面が低下する
  • 前歯で食べ物を噛みきれない
  • 口呼吸になりやすくなる(ドライマウス)

下顎前突(かがくぜんとつ)

一般的に受け口や、反対咬合とも言われる症状です。

下顎前突とは、噛んだときに下顎の歯が上顎の歯よりも突出している状態を指します。

<上顎前突が及ぼす悪影響>

  • 見た目、審美面が低下する
  • しっかりと噛めない
  • 特定の歯や歯槽骨(歯を支える骨)に負担がかかりすぎる場合がある

8020運動(「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動)が最も達成されていない嚙み合わせと言われています。

開咬(かいこう)

開咬とは、口を閉じて奥歯を噛み合わせても上の前歯と下の前歯に隙間ができてしまう状態を指します。

別名オープンバイトとも言われ、数ある不正咬合の中でも最も悪影響があると考えられています。

<開咬が及ぼす悪影響>

  • 口呼吸になる可能性が高い
  • 滑舌や発音に影響する可能性が高い
  • 特定の歯に負担がかかりすぎ、将来的に歯を失う可能性が高い

深い噛み合わせ

深い噛み合わせとは、噛み合わせが深く上の前歯が下の前歯に覆い被さっている状態を指します。

歯科学的には「過蓋咬合(かがいこうごう)」と呼ばれます。

<過蓋咬合が及ぼす悪影響>

  • 顎関節症を引き起こす可能性がある
  • 下の歯が歯肉などを傷つける可能性がある
  • 上顎前突を引き起こす可能性がある

過蓋咬合が及ぼす悪影響

すきっ歯(正中離開)

すきっ歯は歯と歯の間に大きな隙間がある状態を指します。

歯科学的には「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼ばれ、特に前歯に隙間がある状態を「正中離開(せいちゅうりかい)」と言います。

<空隙歯列が及ぼす悪影響>

  • 見た目、審美面が低下する
  • 食べ物が歯間に挟まりやすい
  • 発声がしづらくなる

このような噛み合わせにならないため、また最適な歯並びや噛み合わせに矯正するためには、適切なマウスピース矯正が肝心です。
次に、適切なマウスピース矯正とは何かを見ていきましょう。

マウスピース矯正では適切なものを使用することが大切

きれいな歯並びできちんとした噛み合わせを求めるなら、自分に合ったマウスピースを使用することが大前提となります。

マウスピースの製作は1つだけでゴールにたどり着くわけではありません。
動かした歯の状態に合わせて、数度作り変えていき調整を図ります。

マウスピース矯正は使用方法を守る

マウスピース矯正において満足のいく結果が得られない最大の原因は何かと問われると、適切なマウスピースを使用していなかったこと、そして装着時間を守っていないなど、使用方法にも問題があったと言えます。

取り外すことができるマウスピースですが、1日のうちほとんど(約20時間)の時間を装着した状態で過ごさなければいけません。

装着時間が指示された時間よりも短いと十分な治療効果を期待することは不可能です。

マウスピース矯正で歯並びも噛み合わせも整えていく方法

  • 自分の症状が、マウスピース矯正の適応症例かどうか歯科医師によく確認した上で始める
  • マウスピース装着中の顎の動きまで計算され、正しく設計されたマウスピースを使用する(そのために、経験と技量を持った歯科医を選ぶ)
  • 指定された装着時間を守る

上記に注意すれば、マウスピース矯正で歯並びも噛み合わせも整えていけるでしょう。

マウスピース矯正が適さない症例もある

マウスピース矯正には治療法として適さない症例もあります。

噛み合わせが極端に悪い症例

極端に噛み合わせが悪く、奥歯まで動かさなければいけないような場合は、マウスピース矯正に適しません。

そのため、ワイヤー矯正やインビザラインなど別の矯正方法を考えることをおすすめします。

反対咬合(受け口)

反対咬合(受け口)といって、歯をかみ合わせたときに、下の歯が前に出てしまうような状態の噛み合わせの治療にもマウスピース矯正は適しません。

こうした症例でマウスピース矯正を行うと、噛み合わせを悪化させてしまう可能性があります。

マウスピース矯正での注意事項

マウスピース矯正では、歯科医師によく相談し自分の症状に適しているか否かを確認することが重要です。

適していないのに無理にマウスピース矯正にこだわれば、噛み合わせに問題が生じます。

噛み合わせは単に口腔状態だけではなく、体調や食生活など、生活の質にもかかわってきます。
健康な毎日を送るためには噛み合わせが重要であると言っても過言ではありません。

まとめ

この記事では、マウスピース矯正で噛み合わせが悪くなることはあるのかという点をまとめてきました。
確かに、マウスピース矯正に限らず矯正中や矯正後に噛み合わせが悪くなることがあります。

しかしながらそれは

  • 矯正中の一時的なもの
  • 適切な使用時間が守られていない
  • 適切な症例に用いられていない
  • 患者の症状にあったマウスピースが製作されていない

など、専門的な知識と技量を持つ歯科医師によって解決できるものです。

マウスピース矯正を検討する際は、歯並びだけでなく、噛み合わせまで適切に導いてくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。

マウスピース矯正
高輪クリニックの歯科診療の特徴