歯列矯正は一般的に高額なため、できるだけ費用を抑えたいと考える人は多いでしょう。しかし、マウスピース矯正は、一般的には健康保険の適用外となり、自由診療として扱われます。
この記事では、なぜマウスピース矯正に保険が適用されないのかを解説します。また、歯列矯正に保険が適用される条件や、マウスピース矯正にかかる値段についても取り上げます。
なぜマウスピース矯正に保険が適用されないのか

マウスピース矯正に健康保険が適用されない理由は、主に「審美目的」と見なされるためです。健康保険は、病気やケガの治療を目的とした医療行為に適用される制度ですが、歯列矯正は基本的に見た目の改善を目的としており、病気の治療とはみなされません。そのため、矯正治療は「自由診療」として扱われ、全額自己負担となります。
歯列矯正に保険が適用される条件
歯列矯正に保険が適用される条件は、主に以下の3つがあります。それぞれ詳しく解説していきます。
①「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療 ②前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療 ③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療 引用:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 |
先天性疾患が原因の咬合異常がある
咬合異常とは上顎と下顎の歯のかみ合わせが、ずれている状態を指します。特定の疾患が原因で起こった咬合異常を治療する場合は、保険を適用することが可能です。
この疾患は厚生労働省が指定しており、令和6年度現在すべてで66件あります。以下にその一部を抜粋します。
・唇顎口蓋裂 ・ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。) ・鎖骨頭蓋骨異形成 ・トリーチャ・コリンズ症候群 ・ピエール・ロバン症候群 ・ダウン症候群 ・ラッセル・シルバー症候群 引用:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは | 公益社団法人 日本矯正歯科学会 |
萌出不全が原因の咬合異常がある
萌出不全とは、歯が完全に生え切っていない状態を指します。前歯及び小臼歯の永久歯のうち、3本以上の萌出不全が原因で起こった咬合異常に対する矯正歯科治療には、保険が適用されます。
ただし、咬合異常は埋伏歯開窓術を必要とするものに限ります。埋伏歯開窓術とは、歯茎を切開して埋まっている歯を露出させ、正しい位置まで引き出す処置のことです。
顎変形症の手術前・手術後である
顎変形症とは、顎の形や位置などの異常によって、顔面の変形や噛み合わせに異常を起こしている状態のことです。重度の顎変形症は、外科手術で治療する場合があります。この手術に伴う歯列矯正には、保険が適用されます。
マウスピース矯正にかかる費用の内訳

マウスピース矯正は、診察や検査など複数の過程を経て行われます。マウスピース矯正にかかる値段とその内訳を紹介します。
・カウンセリング・初診にかかる費用
・精密検査にかかる費用
・マウスピースの作成にかかる費用
・通院にかかる費用
・リテーナーにかかる費用
カウンセリング・初診にかかる費用
マウスピース矯正のカウンセリングや初診には、一般的に0円~5,000円程度の費用がかかります。多くの歯科医院では無料カウンセリングを実施していますが、精密な診断を受ける場合には費用が発生することが多いです。
初診では歯並びや噛み合わせの状態を確認し、矯正が必要かどうかを判断します。また、治療方針や費用の見積もり、矯正期間が提示されるため、歯列矯正を検討する際の参考になります。
精密検査にかかる費用
矯正治療を始める前には、精密な検査が必要です。主にレントゲン撮影、歯型の採取、口腔内写真撮影、CTスキャンなどが含まれます。費用は3,000~5万円程度かかることが一般的です。
これらの検査によって、歯や顎の状態を詳細に把握し、細かな治療計画を立てます。マウスピース矯正では、口腔内スキャナーを用いて歯並びをデジタルで記録することもあります。クリニックによっては、検査費用を治療費に含めている場合もあるため、契約前に確認することが重要です。
マウスピースの作成にかかる費用
費用の大部分を占めるのが、マウスピースの作成費用です。全体矯正の場合、60万~100万円程度、部分矯正では30万~60万円程度かかることが多いです。マウスピースは患者の歯並びに合わせてオーダーメイドで作成され、治療期間中に何度も新しいものに交換します。
使用するマウスピースのブランドによって価格が異なり、より高度な治療計画が必要な場合は追加費用が発生することもあります。なお、支払いは分割払いが可能なクリニックも多いです。支払い方法については、クリニックに確認を取ると安心でしょう。
通院にかかる費用
マウスピース矯正では、通常2~3ヶ月に1回の頻度で通院し、治療の進行状況を確認します。通院ごとに診察料が発生し、値段は1回あたり3,000円~10,000円程度が一般的です。
ただし、治療費に通院費用が含まれている場合もあり、契約内容によっては追加費用がかからないケースもあります。また、治療が長引いた場合には、想定よりも多くの通院費がかかることもあるため、事前に合計の費用を試算しておくと安心です。遠方のクリニックに通う場合は、交通費も考慮して費用をシミュレーションするといいでしょう。
リテーナーにかかる費用
矯正治療後に歯並びが元に戻るのを防ぐために、リテーナー(保定装置)が必要になります。リテーナーの費用は、1装置あたり1万~5万円程度が相場で、上下の歯に装着する場合は2つ必要になることが一般的です。
リテーナーの種類には、取り外し可能なマウスピース型や、歯の裏側に固定するワイヤー型などがあります。リテーナーは数年にわたり使用するため、破損や紛失時の交換費用も考慮する必要があります。また、リテーナーの管理や定期的なチェックのために、矯正終了後も半年~1年に1回程度の通院が推奨されることがあります。
マウスピース矯正の費用を軽減するには?

マウスピース矯正は高額なため、できるだけ安く抑えたいと考える人は多いでしょう。マウスピース矯正の費用を軽減する方法は、主に以下の2つです。
・部分矯正を選択する
・モニター制度を利用する
部分矯正を選択する
マウスピース矯正には、全体矯正と部分矯正の2種類があり、費用を抑えたい場合は部分矯正を選択する方法があります。部分矯正は、特定の歯並びの問題だけを改善する治療で、全体矯正よりも短期間で低コストで済むのが特長です。部分矯正の費用相場は、10万~40万円です。
部分矯正が適用可能かどうかは、事前の診察で確認が必要です。全体矯正よりも負担を減らせるため、軽度な歯並びの乱れを治したい人におすすめの方法です。
モニター制度を利用する
モニター制度とは、歯科医院が治療前後の写真や治療データを広告で使用する代わりに、治療費の一部を割引する制度です。マウスピース矯正の費用を抑えられることがあり、費用負担を軽減したい人にとって魅力的な選択肢です。
ただし、個人情報の公開範囲やモニターの募集条件を事前によく確認し、納得できる場合のみ申し込むようにしましょう。
また近年、「モニターになれば実質無料で歯列矯正ができる」といった広告を打ち出しているものの、実際には高額な費用を負担させるといった詐欺的な商法が問題となりました。マウスピース矯正は高度な知識や技術が必要な治療のため、全額無料で行うのは難しいでしょう。そのため、大幅に料金が割引されるモニター制度には、十分注意が必要です。
マウスピース矯正の費用に関するよくある質問
医療費控除は使える?
マウスピース矯正は、一定の条件を満たせば医療費控除の対象となります。医療費控除とは、1年間に支払った医療費が合計10万円以上(または総所得金額の5%以上)になった場合に、所得税の一部が軽減される制度です。
矯正治療が「顎関節症の改善」など医療目的である場合は、控除の対象になります。歯並びの見た目を良くするためだけの矯正は「美容目的」と見なされるため、医療費控除を受けることができません。
医療費控除額は、以下の計算式で求められます。
([支払った医療費の合計] − [保険金等の補填額])− 10万円(または総所得の5%)= 控除対象額(上限200万円) |
デンタルローンとは?
デンタルローンとは、歯科治療の費用を分割払いできるローンのことです。マウスピース矯正は自由診療で高額になるため、一括払いが難しい場合に利用されることが多いです。
デンタルローンの多くは、金融機関や信販会社が提供しており、歯科医院と提携していることがあります。治療費をローン会社が歯科医院に立て替え払いし、患者は分割で返済する仕組みです。デンタルローンは、年利3~8%に設定されることが多いです。
まとめ
この記事では、なぜマウスピース矯正に保険が適用されないのかを中心に解説しました。マウスピース矯正にかかる費用は高額なため、複数のクリニックを比較して、自分に合ったところを選ぶことを心がけましょう。
高輪クリニックグループではマウスピース矯正を取り扱っております。術前にシュミレーションを行ったうえで、必要なマウスピースのおおよその量を算出し、治療費を総額で提示しております。また、総額に応じて手数料のかからない院内分割支払いや低金利のデンタルローンをご案内できますので、お気軽にご相談ください。