口呼吸を続けていると虫歯や歯周病のリスクを高めるほか、歯並びや顔の形が変わる恐れもあります。それでは、口呼吸を自力で治す方法はあるのでしょうか。本記事では、口呼吸が体に与える悪影響をくわしくお伝えしたあとに、口呼吸を治すための具体的な方法を解説します。
口呼吸のチェックリスト
まずは自分自身やお子さんが口呼吸なのかどうか、以下の症状と照らしあわせて判断しましょう。
【口呼吸のチェックリスト】
自分自身の口呼吸を確かめる場合 | 子どもの口呼吸を親が確かめる場合 |
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・無意識に口が開いている ・口内や唇が乾燥している ・口が「へ」の字に曲がっている ・いびきをかきやすい ・鼻詰まりが多い ・前歯が飛び出している | ・いつも口をポカンと開いている ・喉が渇きやすい ・いびきをかきやすい ・鼻詰まりが多い ・口を閉じた際に顎に梅干しのようなシワができる ・口臭が強い |
あてはまる項目が多ければ多いほど、口呼吸が癖になっている可能性が高い状態です。
口呼吸が体に与える悪影響
口呼吸が体に与える悪影響は多く、以下のように7つのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
<口呼吸が体に与える悪影響>
- 虫歯・歯周病になりやすくなる
- 口臭が発生しやすくなる
- 風邪・アレルギーになりやすくなる
- 歯並びが悪化する
- 睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がる
- 酸素の取り込みがしにくくなる
- 顔の形がゆがむ
なぜこのような悪影響が生じるのか、そして放置するとどうなるのかを解説しましょう。
虫歯・歯周病になりやすくなる
口呼吸を続けていると、虫歯・歯周病になりやすくなります。その理由は、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑制する作用を持つ唾液が不足するためです。口呼吸をする人は口内が空気が触れやすく、口腔内が乾燥するため、細菌に抗う力を失ってしまいます。
口臭が発生しやすくなる
口呼吸により口臭が発生しやすくなることも問題です。先述したとおり口呼吸をしていると唾液が減り、食べ物のごみや細菌の塊であるプラークを洗い流しにくくなります。これらが発酵して強いにおいを発し、細菌そのものが持つにおいと混じることにより、強い口臭を放ちやすくなるのです。
風邪・アレルギーになりやすくなる
風邪を引いたり、アレルギーになりやすくなったりする点にも注意しましょう。口呼吸をすると、空気中に漂っているウイルスや病原菌が直接器官に侵入し、風邪やアレルギーを発症しやすくなるのです。一方の鼻は粘膜や鼻毛がフィルターの役目を果たしますから、鼻呼吸への移行で感染症のリスクを抑えられます。
歯並びが悪化する
口呼吸を続けると歯並びが悪化します。鼻呼吸をする人の場合、舌は上顎の「スポット」と呼ばれる正しい位置に置きやすくなります。しかし口呼吸をすると、舌は下顎に密着することが多く、下顎の成長ばかりが促進されてしまうのです。結果として「受け口」や「出っ歯」になりやすいため、注意しなければなりません。
睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がる
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に長時間にわたって息を止めてしまう症状のことです。場合によっては命にもかかわる重大な問題ですが、これも口呼吸の人ほど発症しやすいため注意しなければなりません。
口を開けたままの状態で寝ていると、下顎や舌が重力に逆らえずに下がってしまい、軌道を圧迫してしまいます。結果的に息ができなくなり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因になるのです。このような重大なトラブルを防ぐためにも、口呼吸はできるだけ早く改善しなければなりません。
酸素の取り込みがしにくくなる
1回の呼吸で取り込める酸素の量を比較すると、口呼吸は鼻呼吸よりも少ないことがわかっています。仮に1日に同じ数の呼吸をした場合、口呼吸をする人は鼻呼吸をする人よりも脳に酸素が行き届かせられません。これにより、集中力や代謝が低下するといった問題が生じやすくなります。
顔の形がゆがむ
口呼吸が原因で顔の形がゆがむこともあります。口の周りには表情筋など多くの筋肉がついていて、きちんと口を閉めることで無意識のうちに筋肉を鍛えることが可能です。しかし口呼吸を続けていると、口や頬の筋肉が落ちてしまいますから、口周りを中心にだらしなくゆがんだ顔の形になる場合があります。
口呼吸の治し方
口呼吸の治し方を6つのパターンに分けて解説します。
<口呼吸の治し方>
- 鼻呼吸を意識して行う
- 舌の位置を上顎につくよう意識する
- 口にテープを貼って寝る
- 口周りのトレーニングをする
- 耳鼻科・歯科を受診する
- 矯正治療を受ける
まずは自分でできる対処法を試して、改善が難しい場合は専門医による治療を受けましょう。
鼻呼吸を意識して行う
意識的に鼻呼吸を行いましょう。単なる癖で口呼吸をしている場合、意識づけをするだけでも鼻呼吸へと矯正できる場合があります。
舌の位置を上顎につくよう意識する
舌が下顎に密着していると、自然と口が開きやすくなってしまいます。舌の位置を上顎につくように意識するだけでも、無意識に口が開くことを避けやすくなるはずです。
口にテープを貼って寝る
寝るときに口にテープを貼る対策も有効です。口を防ぐことにより、睡眠中の無意識な状態でも鼻呼吸をするようにアシストできます。セロテープなどを貼ると痛みやかぶれの原因になりますから、薬局などで販売されている鼻呼吸テープを使いましょう。ただし、お子様の口テープは危険とされている場合が多いため、お子様の使用を検討される場合は必ず耳鼻科での診断を受けてからにしましょう。
口周りのトレーニングをする
口周りのトレーニングで筋肉を鍛えると、だらしなく口が開くことがなくなります。
<口周りのトレーニング方法>
- ガムを噛む
- あいうべ体操
- ポッピング
3つのトレーニング方法をかんたんに解説しましょう。
ガムを噛む
ガムを噛むことで顎や口周りの筋肉を鍛えられます。虫歯や歯周病のリスクを下げられる、キシリトール配合のガムを利用すれば一石二鳥です。ガムを噛むときは、お口を閉じだ状態で、くちゃくちゃ食べないように注意。
あいうべ体操
道具を使わない舌のトレーニング法に「あいうべ体操」があります。手順は以下のとおりです。
<あいうべ体操の手順>
- 「あー」と発声しながら大きく口を開ける
- 「いー」と発声しながら口を横に開く
- 「うー」と発声しながら口を前に突き出す
- 「べー」と発声しながら舌を突き出し、下にそらす
これを4回繰り返したものを1セットにして、1日30セット程度続けましょう。
ポッピング
舌を上顎に押し当てて固定するためのトレーニングです。
<ポッピングの手順>
- 舌先を割顎の前歯の付け根付近に押しつける
- 舌全体で上顎を吸い上げる
- 口を開けて舌の裏筋を伸ばす
- 舌をポンと音が鳴るように力を抜いて落とす動作を10回繰り返す
舌先はできるだけ丸めず、伸ばした状態で行いましょう。
耳鼻科・歯科を受診する
改善できない場合は、耳鼻科・歯科の受診がおすすめです。鼻に疾患があり、これが原因で口呼吸がしにくくなっている可能性があります。また、虫歯が原因で蓄膿症を引き起こし、鼻呼吸しにくい状況になっている恐れもあるため注意しましょう。
矯正治療を受ける
歯並びが悪いせいで口がポカンと開いてしまう場合もあります。このような問題は、矯正治療による解消が可能です。矯正治療を受けることで、口呼吸を改善できる可能性があるほか、虫歯・歯周病のリスクを下げたり、頭痛・肩こりを減らしたりといった作用にも期待できます。
まとめ
口呼吸を続けていると、睡眠時無呼吸症候群のような命にかかわる重大なリスクを高める可能性があります。自分でできる治し方だけで改善できない場合は、耳鼻科や歯医者に足を運び、適切な治療を受けて鼻呼吸へと改善しましょう。
高輪クリニックでは、医科と歯科のつながりを大切にした医療を行っています。当院で口呼吸の原因を探ることにより、口腔内に問題があるのか、それとも鼻に問題があるのかを突き止めることが可能です。そのまま最適な治療法を案内できますので、口呼吸をどこに相談するべきかわからない方も当院をご利用ください。