市販のマウスピースで歯列矯正はできるのでしょうか?
市販のもので矯正できるなら、出っ歯もセルフで矯正できるのでしょうか。
この記事では「市販のマウスピースで矯正できるかどうか」について解説していきます。
大人の歯列矯正はどのくらいかかる?
歯科クリニックでの大人の矯正治療にはどのくらいの時間がかかるかご存知でしょうか?
矯正期間はマウスピースかワイヤーか、部分矯正か全体矯正かによっても変わってきますが、約1年~2年半ほどかかります。
また、歯並びの状態をはじめとした口腔内の環境や治療方法によっても治療期間に差がでてくるので、上記の期間はあくまで目安として考えてください。
矯正中の快適さが支持されているマウスピース型矯正
短期間で歯列が整うことをアピールしているマウスピース型矯正もありますが、全く同じ症状で比べてみると、やはりワイヤー矯正よりもマウスピース型矯正の方が治療期間は長くかかります。
マウスピース型矯正の良さは歯に直接金属のブラケットを付ける必要がない点や気軽に取り外せる点です。
治療の速さより、治療中の快適さを重視する人から支持が高いです。
矯正で歯が動く仕組みとは?
矯正治療では矯正装置を使うことで歯を動かし、歯列を矯正していきます。
簡単にうごくわけではないですが、歯に圧力を加えることで、徐々に歯が動いていくというのが矯正の仕組みです。
骨は固く、成長が止まった後は変化しないと思われるかもしれませんが、実は、骨というのは、古い骨から新しい骨に置き換わる「骨代謝」と呼ばれるものが常に身体の中で起きています。
骨代謝とはどういうこと?
骨代謝とは新しく骨を作っていく(骨造成)一連のメカニズムのことです。
簡単に説明すると、古くなった骨を破骨細胞と呼ばれる細胞が分解・吸収し(骨吸収)、それと同時に骨芽細胞と呼ばれる細胞が新しく骨を作っていくということが体内で行われています。
どうして矯正治療には時間がかかる?
矯正治療は骨代謝という人体のメカニズムを人工的に引き起こして利用しています。
歯に一定の力を加え、力が加わった側(歯が押さえつけられた側)の歯槽骨で破骨細胞が骨を分解・吸収するので、圧力がかけられた方とは反対側の歯槽骨では、隙間を埋めるようにして骨芽細胞が骨を作っていくという原理を利用しているのです。
厳密に言うと歯と歯槽骨の間には「歯根膜」と呼ばれる膜(靭帯)が存在し、歯根膜が圧迫されたり、伸ばされたりすることで、破骨細胞・骨芽細胞の働きが活発化します。
矯正治療はこのような骨の変化を促すことが必要な治療のため、時間がかかります。
後戻りを防ぐ「保定期間」とは?
矯正治療後すぐの歯周組織は不安定であり、歯がもとの位置にもどろうとします。
矯正治療によって整った歯を保つためには、保定装置(リテーナー)を付けて後戻りを防ぐための期間をとります。
その期間のことを「保定期間」といい、矯正治療にかかった期間にプラス半年程度が理想的といわれています。
市販のマウスピースで歯列矯正できる?
歯列矯正に費用をなるべくかけまいと、市販のマウスピースを購入し、矯正を試みようとする方もいるようですが、結論からいうと、市販のマウスピースで歯列矯正はできるはずがありません。
その人専用に作られたものではないため、症状が改善できないばかりか、トラブルが発生するケースもあるので注意が必要です。
市販のマウスピースは歯列矯正を目的としていない
市販で販売されているマウスピースの多くは、歯を保護する役割が主な用途です。
例えば、歯ぎしりやいびき防止といった、いわゆるナイトガードとしての使用が一般的です。
また、スポーツ時に利用する食いしばり防止の商品もありますが、いずれも歯列矯正用ではないため歯を移動する機能はありません。
歯列矯正に使用するには安全性が不明
「軽度であれば矯正できます」と、あたかも歯列を整えられるようなニュアンスを醸し出して販売されている商品にはとくに注意が必要です。
歯科クリニックのオーダーメイドで作成したものではないため、自分の歯列の状態を考えられて作られているはずもなく、ピッタリ合うはずもないので、装着しても違和感や痛みを感じるリスクが高いです。
症状を悪化させてしまう可能性もある
「軽度な出っ歯やすきっ歯などは改善できます」とされている場合でも、オーダーメイドではないため、自身の歯列やアーチに合わず、噛み合わせがズレてしまうなど、症状を悪化させてしまうことがあります。
費用が余計に掛かってしまう可能性もある
市販のマウスピースで矯正を試みたはずが、合わなかったために症状の悪化や痛みなどで、結局は歯科での治療が必要になり、余計に費用と期間がかかってしまうリスクもあります。
市販のマウスピースより歯科クリニックでの矯正が良い理由
市販のマウスピースは低コストで手軽に入手できるメリットがありますが、歯科クリニックで矯正治療する方が良い最大の理由は以下の2つです。
- 正確性
- 安全性
歯科クリニックでマウスピース矯正の治療をするメリット
なぜ市販のマウスピースで矯正するよりも、歯科医院での矯正治療が良い明確な理由ははたして何でしょうか。
費用も大切ですが、同じくらい重要な歯科クリニックでマウスピース矯正するメリットを4つ紹介します。
自分の歯に合ったマウスピースを用意できる
歯科クリニックで矯正用のマウスピースを用意するときは、本人の歯を型取りした歯型をもとにオーダーメイドでつくられたものを使用します。
自分専用であるため、当たり前ですが、隙間なくフィットしますし、装着による違和感や話しづらさも軽減されていて、既製品とは着け心地が明らかに違います。
無理なく少しずつ歯を移動できるように事前に練られた計画書によって、歯の動きを調整されているため、正確に歯列を整えることができます。
安全性と効果が高い
歯科クリニックでのマウスピース矯正は、歯科医師による治療計画に沿って進められる治療です。
矯正治療中は定期的に通院し、矯正の効果の進捗管理を行い、その段階で最適なマウスピースに交換します。
専門家の管理のもと、計画に沿って進めていく歯科クリニックでのマウスピース矯正は安全性はもちろんのこと優れた効果を発揮します。
トラブルが発生した際も対応できる
マウスピースは薄いプラスチックでできているものなので、歯ぎしりや食いしばりなどの噛む力によってかかるダメージにより破損してしまうこともあります。
歯ぎしりや歯をくいしばる力は、なんと30kg~100kgに及ぶことがあるほど強いといわれています。
また、矯正全般にいえることですが、矯正治療中はジュースの糖分や食べカスが原因で虫歯になりやすくなります。
しかし、歯科クリニックでの矯正治療であれば、定期的にメンテナンスや適切な対処をしてもらえるので安心です。
結果的に治療費が抑えられる
市販のマウスピースは自己管理なため、衛生面でのリスクが高く、虫歯などになりやすいです。
装着時間や歯の移動に合わせて形状を変えていくこともできないため、歯列をきれいに矯正できるとも限りません。
そのため、結局歯科クリニックでの治療や矯正が必要になる可能性があります。。
市販のマウスピース矯正とクリニックのマウスピース矯正の違いを比較
改めて市販のマウスピースと歯科矯正用のマウスピースの違いを下記にまとめました。
さらに詳しく解説していきます。
歯科矯正用のマウスピース | 市販のマウスピース | |
目的 | 歯並びを矯正する | 睡眠中の歯ぎしり抑える スポーツ等で歯を保護する |
特徴 | 医師の診断のもと オーダーメイドで作成 | ドラッグストアや 通販で購入可能。 |
医師の診断 | 必須 | 診断がなくても購入できる 製品もある |
使用方法 | 経過に応じて付け替えしながら 数ヶ月~2年ほど継続 | 買い切り |
目的の違い:市販のマウスピースは矯正目的の商品ではない
まず第一に大きな違いは、その「目的」です。
市販のマウスピースの使用目的は、歯列矯正のためにつくられていません。
睡眠中に歯ぎしりをしてしまう人や、激しいスポーツの時に歯が欠けてしまうのを保護したりと、歯を衝撃や刺激から守るためのものです。
市販のマウスピースを、歯並びを矯正するために使うことができないのは、そもそもが目的外なのですから当然です。
作成方法の違い:市販のマウスピースは専用でないため、矯正効果はない
市販のマウスピースはドラッグストアやネット通販などを通じて購入したマウスピース矯正キットを、基本的に自分で型取りをして使用するものです。
一方、矯正で使用するマウスピースは、歯科専門医による診療、診察を受けて、個人に合った治療計画を作成してもらい、それに基づいて、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドのマウスピースを作成してもらうものです。
また、矯正は段階を踏んで進んでいくため、マウスピースは一つ作って終わりではなく、矯正の進捗度合いをみながら何回か作成されます。
治療プロセスの違い:市販のマウスピースは治療ではないため医師による調整がない
市販のマウスピースは一般的に購入したキットをそのまま使います。
そもそも歯列矯正を目的としていないので、使用前後に医師の診察はありません。
一方、歯科矯正用のものは、マウスピースを作成する段階から医師の診断によって作られています。
一度作成したマウスピースを着用したあとも、定期的に医師による経過観察や調整が行われ、歯列の状態に応じた細かいケアを受けられます。
価格の違い:専門的な治療用が保護や改善用か
市販のマウスピースは、治療するために作られたものではなく、そもそも歯の保護や歯ぎしりの防止がその用途なので、治療専用のものに比べると手頃な価格帯で入手することができ、だいたい数百~数千円で購入できるものがほとんどです。
歯列矯正用のマウスピースはというと、その人の歯の状態や、医師の見立てた矯正の治療計画に従って、その人だけのマウスピースが作成されます。
治療目的である分、価格としては比較的高価となります。
矯正歯科でのマウスピースにはどんな種類がある?
歯科クリニックで扱っている医療用のマウスピースにはどんなものがあるのか、代表的な2つの種類について紹介します。
インビザライン
- さまざまな歯並びの悩みに対応
- 歯科医師による診断のもとに使用
- 世界1,300万人以上が使用する実績
米国アラインテクノロジー社という会社がインビザラインで使用されるマウスピースの製造を行っており、なんと、世界100カ国以上の国々で提供されている実績と信頼のあるメーカーです。
インビザラインは、症状によっては対応できない場合もあるものの、口内全般の複雑な症例も対応でき、噛み合わせの悪さをはじめ軽度から重度まで口内の健康に幅広く取り組んでいるのが特徴です。
インビザラインのマウスピースは見た目にも目立ちにくく、素材は、薄さ0.5mm程度のポリウレタン製で弾性があるため装着感が良いのがポイントです。
そのため、矯正器具にありがちな歯茎などを傷めるといった心配もほとんどなく、矯正期間中もとくに不都合なく快適に日常を過ごすことができるでしょう。
インビザライン矯正は4つのパッケージで展開
インビザラインには、症状ごとに4つのパッケージがあります。
歯科医師の治療計画や患者様の口腔内の状態などにより、使用する製品が異なるようです。
パッケージ | 適用ケース | |
コンプリヘンシブ | 重度 | あらゆる歯並びの悩みに |
モデレート | 中度 | 大きく咬み合わせを変えない中度の症状に |
ライト | 軽度 | 軽度の噛み合わせの悩みや、 少しガタガタしている歯並びに |
エクスプレス | ごく軽度 | ちょっと気になる歯並びのずれに |
hanaravi(ハナラビ)
- ワイヤーもマウスピースも対応可能
- LINEでいつでも相談できる
- 通院回数最低1回で忙しい人でも安心
- 世界で1,000万人以上の利用者
日本で開発された「hanaravi(ハナラビ)」は、主に審美的な改善を目的とした矯正治療です。
そのため、インビザラインと比較すると治療として対応可能な症例の範囲は限られます。
しかし、審美的な役割には長けているため、人目に付きやすい出っ歯、すきっ歯の改善といった「部分的に治したい」などの要望に対しては、軽度から中程度までの矯正にもってこいの治療方法です。
hanaravi(ハナラビ)で使用されるマウスピースはコストパフォーマンスにも優れ、装着時の見た目もほとんど違和感ないと言っても過言ではありません。
また、通院回数が少なくても大丈夫なので、患者様の負荷を減らせると注目の矯正方法です。
マウスピースできれいな歯をめざすなら
市販のマウスピースで歯並びを矯正できるのか、市販のものと医療用ではどのような違いがあるか等についてお伝えしました。
歯ぎしりやスポーツの時などには市販のマウスピースを、本格的に歯並びを美しくしたいなら医療用と、目的に合わせて使い分けしていくことをおすすめします。