「自分の歯ではなく、インプラントを使ってブリッジはかけられる?」
「ブリッジにするかインプラントにするかなかなか決められない」
上記のような疑問や悩みをもっている方もいるのではないでしょうか。
インプラントもブリッジも、失った歯を補う歯科技術です。失った歯が数本ある場合には、双方を組み合わせた治療法に魅力を感じることもあるでしょう。また、どちらの施術にもメリットとデメリットがあるため、どちらの治療法を選択すべきか悩ましいところです。
本記事では、インプラントでブリッジできるかどうかを解説します。併用する場合の費用の目安や、併用した施術のメリットとデメリットもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
インプラントでブリッジは可能
インプラントを利用したブリッジ治療は可能です。インプラントとブリッジを併用する施術は、インプラントブリッジと呼ばれる場合があります。
インプラントブリッジは、歯を3本連続して失った場合に検討するのが一般的です。適用可能なケースが限られ、患者さんの症状によってはあまりおすすめできないこともあります。併用治療に興味がある場合には、まずは歯科クリニックで検査のうえ、担当医師と相談してみるのが大切です。
インプラント・ブリジットの治療法をおさらい
インプラントとブリッジの併用治療を説明する前に、まずはそれぞれの治療法をおさらいしておきましょう。
インプラント | ブリッジ | |
治療法の概要 | 歯が抜けた部分に人工歯を埋め込む | 抜けた歯の両隣の天然歯を支えにし、人工歯を橋渡しするようにして被せる |
機能性 | 人工歯根を骨に埋め込むため安定性が高く、噛む力も強い | 土台がやや不安定なため強く噛めない |
見た目の自然さ | 天然歯と違和感のない自然な仕上がりが可能 | 保険適用での治療では審美性が劣る傾向がある 自由診療の素材を使えば自然な仕上がりが可能 |
口腔内への影響 | 失った歯ごとに施術するので他の歯への影響は少ない | 両隣の歯を削って補綴物を被せるうえ、そこに負荷がかかる |
治療期間 | 治療完了まで半年~1年程度が目安 | 治療完了まで1~2か月 自由診療では調整に時間がかかるため長くなりやすい |
保険適用の可否 | 基本的には自由診療となるため治療費用がかかる ※生まれつきの疾患や外傷性の場合は保険適用できるケースもあり | 保険適用が可能なため治療費用を抑えられる 審美性にこだわると自由診療となり、費用がかかる |
治療費用の目安 | 1本あたり30~40万円 | 1~15万円 保険適用の場合、奥歯は1本につき1万円、それ以外は2万円程度 自由診療の場合は素材により5~15万円ほどかかる |
施術の寿命の目安 | 10~15年 | 7~8年 |
インプラントは機能性や審美性、耐久性に優れる反面、治療費用がかさむ傾向があります。一方のブリッジは保険適用が可能なため治療費用を抑えられますが、機能性や審美性、耐久性はインプラントより劣ります。
よくあるインプラントとブリッジの併用パターン

よくあるインプラントとブリッジの併用パターンは、以下の2つです。
<よくあるインプラントとブリッジの併用パターン>
- 歯を連続して3本失う⇒インプラントを2本入れブリッジをかける
- 片顎の歯をすべて失う⇒インプラントを4~6本入れ片顎全体にブリッジをかける
それぞれの内容は次のとおりです。
歯を連続して3本失う⇒インプラントを2本入れブリッジをかける
歯を連続して3本失った場合、3本のうちの両端にインプラントを入れ、真ん中の欠損部分に橋渡しするようにしてブリッジをかけます。
3本の歯を連続で失った場合、元ある天然歯を支えにしたブリッジでは負担がかかりすぎるため、入れ歯を選択するの一般的です。しかし、インプラントを併用することでこの問題がクリアされ、ブリッジの治療が可能となります。
インプラントを2本入れそこにブリッジをかける施術は、双方の併用パターンのなかではよくあるオーソドックスな治療方法です。
片顎の歯をすべて失う⇒インプラントを4~6本入れ片顎全体にブリッジをかける
上顎全体や下顎全体の歯をすべて失った場合には、間隔を空けてインプラントを4~6本埋め込み、その上を覆うようにしてブリッジをかけます。
この施術法は、ボーンアンカード・フル・ブリッジと呼ばれることがあり、おもに下顎全体の施術に利用されます。ボーンアンカード・フル・ブリッジは入れ歯より違和感が少なく、物をしっかり噛めるのが利点です。総入れ歯の使用感になじめない方や、若くして入れ歯になった方におすすめの施術方法です。
インプラントでブリッジする際の費用の目安
インプラントとブリッジを併用した際の治療費は、歯1本あたりインプラントが30~40万円、ブリッジが1~15万円であることから概算できます。
例として、歯を連続して3本失い、インプラントを2本入れて間にブリッジをかける場合を考えてみましょう。この場合は、インプラント代として60~80万円、ブリッジ代として1~15万円、合計で61万円~95万円が治療費用の目安です。
上記はあくまで概算値です。患者さんの症状や治療部位、希望するインプラントやブリッジの素材、施術を依頼するクリニック次第で治療費用が異なり、金額に幅が出ます。あくまで参考値ととらえたうえで、クリニックのホームページを確認したり、カウンセリングで相談したりしましょう。
インプラントでブリッジする4つのメリット

インプラントを使ってブリッジするメリットは、以下の4つです。
<インプラントでブリッジするメリット>
- インプラントの本数を減らし顎にかかる負担を減らせる
- 天然歯に負荷がかかるのを防げる
- すべてをインプラントにするより治療費用を抑えられる
- 治療期間を抑えられる
順番にチェックしていきましょう。
インプラントの本数を減らし顎にかかる負担を減らせる
インプラントとブリッジを併用すれば、インプラントの本数を減らせるため、顎にかかる負担を減らせるメリットがあります。
インプラントでは顎の骨に穴を開け、そこに人工歯を埋め込みます。歯を連続して失った場合、部分的に穴が集中することで骨に負担がかかりやすくなりますが、ブリッジを併用すれば穴が減り、負担の軽減が可能です。
天然歯に負荷がかかるのを防げる
天然歯に負荷がかかるのを防げるのも、インプラントでブリッジするメリットです。
通常のブリッジでは、天然歯を支えに施術を行います。健康な歯をわざわざ削って施術する必要があり、なおかつ支えに使われることで負荷がかかります。
一方、インプラントを2本埋め込み、間にブリッジをかける方法であれば、土台にするのはインプラントです。周囲の健康な歯を温存できるため、今ある口腔内の環境を保ちやすいでしょう。
すべてをインプラントにするより治療費用を抑えられる
インプラントとブリッジを併用すれば、すべての歯をインプラントにするより治療費用を抑えられます。
インプラントはブリッジと比較し、1本あたりの単価が高額のため、本数が減ればその分費用がかかりません。ブリッジであっても、自費の素材を選択すれば審美性の問題にも対処可能なため、なるべく治療のコストを抑えたい方には大きなメリットがあるでしょう。
治療期間を抑えられる
治療期間を抑えられるのも、インプラントとブリッジの併用で得られるメリットです。
インプラントの本数が少ない方が手術時間が短く済み、手術で身体にかかる負担が緩和されます。術後の回復期間についても、埋め込み本数が少なければ短くなる傾向がみられるため、早期の完治を目指す人には大きな利点があるでしょう。
インプラントでブリッジする3つのデメリット

インプラントでブリッジする場合には、以下のような3つのデメリットが存在します。
<インプラントでブリッジするデメリット>
- メンテナンスに注意を要する
- インプラントに負荷がかかりやすい
- ブリッジだけの治療より費用がかかる
具体的な内容を解説しています。
メンテナンスに注意を要する
インプラントとブリッジを併用する場合には、それぞれを単独で施術するよりメンテナンスに注意を要します。
複数の装置を組み合わせた併用治療は構造が複雑になりがちで、クリーニングがしにくくなる傾向があります。特にインプラントを埋め込んだ周囲や、ブリッジの下部は汚れがたまりやすいため、歯周病や歯周炎になりやすいのが欠点です。毎日のホームケアとともに、クリニックでの定期メンテナンスを積極的に受診する必要があります。
インプラントに負荷がかかりやすい
インプラントでブリッジすると、インプラントに負荷がかかりやすくなるのもデメリットです。
例えば、3本連続して欠けた歯を2本のインプラントと1つのブリッジで補う場合、3本分の歯の働きを2本のインプラントが担うことになります。天然歯の場合には歯根膜と呼ばれるクッション機能が備わっていますが、インプラントにはそれがありません。ブリッジの負荷がダイレクトにインプラントに伝わりやすいため、インプラントの寿命に悪影響を与える可能性があります。
ブリッジだけの治療より費用がかかる
インプラントにブリッジをかける場合、天然歯にブリッジをかけるより費用がかさみます。
ブリッジは、保険適用の素材を使えば1本あたり1~2万円程度で治療できますが、インプラントは1本あたり30~40万円の治療費がかかります。カウンセリングの段階で、治療費に見合った効果が得られそうか十分検討しましょう。
インプラントでブリッジする際のよくある質問
インプラントでブリッジする際のよくある質問として、以下の2つを紹介します。
- インプラント2本でブリッジを作り奥歯を治療できる?
- 一番奥の歯にもブリッジできる?
質問とそれに対する回答を紹介していきます。
インプラント2本でブリッジを作り奥歯を治療できる?
奥歯であっても、インプラントとブリッジを併用した治療は行えます。例えば、2本のインプラントを支えにし、間にブリッジをかける方法は、奥歯にも適用可能です。
ただし、患者さんの症状や、歯の抜けた箇所と本数によっては対応できない場合もあるため、気になる方は歯科医院で相談しましょう。
一番奥の歯にもブリッジできる?
一番奥の歯にブリッジをかけること自体は可能です。
一番奥の歯をブリッジでカバーする場合には、強度の課題があることから、手前の2本の歯を支えにする特殊なブリッジが必要です。これを延長ブリッジと呼びます。
延長ブリッジは1方向からブリッジを支えるため、ブリッジを支える歯に大きな負荷がかかります。治療を検討する際には、担当の歯科医師と入念に相談しましょう。
インプラントでブリッジできる!希望に合わせて治療法を選択しよう
インプラントを利用したブリッジ治療は可能です。
インプラントにブリッジをかける治療法は、一般的なインプラント治療よりインプラントの本数が少なく済む分、身体への負担や費用が抑えられるメリットがあります。一方で、埋め込んだインプラントに負荷がかかりやすいという課題があり、通常以上にメンテナンスに配慮が必要です。
自分の希望と施術のメリット・デメリットを照らし合わせ、納得のいく治療を選択するようにしましょう。