若い世代に罹患者の多い、過敏性腸症候群(IBS)。2ヶ月以上、便秘や下痢、またはその繰り返しの症状が続きますが、腫瘍や炎症など器質的な異常が認められないことから診断も難しい病気の一つです。もしかして自分は過敏性腸症候群かも? という方は、過敏性腸症候群についてご理解の上、ぜひチェックしてみてください。
過敏性腸症候群(IBS)とは
「下痢もしくは便秘が続いている」「下痢と便秘を交互に繰り返す」「不安や緊張といったストレスによって急に激しい腹痛に襲われる」「ガス漏れが続く」「人が背後にいるとガスが止まらなくなる」「急にトイレに行きたくなるので外出が不安」「ストレスを感じやすい」「頭痛が続く」「慢性的に吐き気がある」「うつっぽい」…といった症状が頻繁にあり、さらに続いているようであれば過敏性腸症候群(過敏性大腸炎 略称;iBS)の可能性があります。
過敏性腸症候群(IBS)は10代〜30代と若い世代を中心に増えており、ストレスと深い関係があるため、特に先進国での罹患率が高い病気です。自律神経の乱れにより症状があらわれますが、腸管には腫瘍や潰瘍といった器質的な異常が認められないため、診断が難しい病気の一つです。
過敏性腸症候群( IBS)の4つのタイプと症状
過敏性腸症候群(IBS)は便の形状から、便秘型、下痢型、混合型(便秘と下痢を交互に繰り返す)、分類不能型の4タイプに分類されます。
下痢型
男性に多く、ストレスを感じると急激な下痢を引き起こします。腹痛を伴うことが多く、便に粘液が混ざることもあります。
便秘型
女性に多く、ストレスを感じると便秘が続きます。硬い便やコロコロ便です。
混合型
下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れます(交代性便通異常)。
分類不能型
上記いずれにも当てはまりませんが、便の形などで判断します。
また、ガスがずっと漏れ続けるガス漏れ症状や、まれに人が背後に立つとガス漏れが止まらなくなるという症状もあります。
過敏性腸症候群(IBS)かを自分でチェック
以下に当てはまる症状はありますか? チェックしてみましょう。
- 排便するとお腹の不快感(腹痛、膨満感など)が軽くなる
- 下痢には腹痛が伴うことが多い
- 下痢と便秘を繰り返すことが頻繁にある
- 便をした後も、残便感がある
- 1日に3回以上の下痢をすることがある
- コロコロと硬い便が少量しか出ない
- ストレスや睡眠不足でお腹の不快な症状が悪化する
- 緊張や不安など気分的な落ち込みが強い
- 出勤時(登校時)や会議(授業)の前に限りお腹の不調が起こる
- ガスが溜まってお腹が張っていることが多い
上記でひとつでも当てはまるものがあり慢性化しているようであれば、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。2つ以上当てはまる場合は、過敏性腸症候群(IBS)に罹患している可能性が高いため病院での受診をおすすめします。
過敏性腸症候群(IBS)の原因とは
ではなぜ過敏性腸症候群(IBS)は起こるのでしょうか? 過敏性腸症候群を引き起こす原因は、大きく分けて2つと考えられています。一つは、自律神経のバランスが乱れた結果、不安や緊張といったストレスが自律神経や液性因子(ホルモン、サイトカインなど)を介して腸の異常な蠕動運動を引き起こしているというもの。過度の緊張やプレッシャー、ストレスなどが引き金となり、症状が引き起こされます。
もう一つの原因として考えられているのが神経伝達物質「セロトニン」の影響です。精神の安定に関わるため幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは約90%が腸内で作られますが、腸内フローラのバランス崩壊により産生過多が起こると自律神経に影響を与えます。ストレスによって腸のセロトニンが過剰に分泌されると腸内のセロトニン受容体と結合し蠕動運動に異常が発生。それにより腸の不快感、腹痛、下痢などを引き起こします。
腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、自律神経やホルモン、サイトカインを介し、伝達しあっています。よって、寝不足続きや外食続きでたまたま腸内環境が悪化しているときなどにも過敏性腸症候群は発症しやすい傾向となりますし、ストレスが重なって症状が慢性化することにより、過敏性腸症候群に罹患する可能性が高まります。
過敏性腸症候群(IBS)の一般的な治療方法
過敏性腸症候群(IBS)はストレスと関わりの深い病気であり、治療方法も食事療法や運動療法、薬物療法、心理療法等が一般的です。心理療法においてはまずストレスの原因となっているものをはっきりさせ、精神的不安定を解消していくことが改善の第一歩です。自律訓練法を習慣にしたりカウンセリングを受けたり、必要に応じて心療内科を訪れることも良いでしょう。食事療法、運動療法においては、ライフスタイルを見直し、脂質や刺激の多い食生活や過剰な飲酒、喫煙などについては改善を心がけます。適度な運動はストレスにもいい作用を及ぼすため、運動不足の解消に努めましょう。また、ガスの症状が強い場合は、腸に空気を送り込んでしまいやすい早食いや、すすりながら飲む熱すぎる飲料、炭酸飲料をなるべく避けて水分や食物繊維の摂取に努めることも大切です。
薬物療法としては消化管機能調整薬の抗コリン薬や便性状改善薬、抗うつ薬、対症療法薬として整腸剤、さらに漢方薬などが挙げられます。しかし、これらは長期的に見た場合の改善率は必ずしも高いとは言えないのが現状です。
治癒率の高い過敏性腸症候群(IBS)の最新の治療方法
近年、過敏性腸症候群(IBS)は腸内フローラの乱れや歯の金属によるアレルギー、及び発生するガルバニック電流などの影響が大きいことも分かってきました。
その改善率の高さから、過敏性腸症候群の治療法として注目を集めているのが腸内フローラ治療です。腸内フローラ検査で腸内細菌叢の構成を検査したうえで適切な乳酸菌マッチングが行われます。また、患者さんによっては関連していると考えられている口腔内の金属の状態をチェックし、口腔内から処置をしていくことも最新治療法のひとつとなっています。
過敏性腸症候群(IBS)における当クリニックの総合的診療
過敏性腸症候群はいまだ患者さんが納得できる治癒を実現するのが難しい病気の一つです。しかしながら当クリニックでは腸内フローラ検査や口腔内金属アレルギー検査などによって根本的な原因に辿り着き、抜本的治療法での改善に取り組んでおります。まずは過敏性腸症候群の根本原因をチェックする、初回カウンセリングにお申し込みください。
監修:長岡 美妃
現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他