おりものの量が増えたり、臭いがきつくなったりしたときに細菌性腟炎を疑いますが、「細菌性腟炎にはビオフェルミンが効く」という話を聞いたことはないでしょうか?
確かに腸内環境を整えることで細菌性腟炎になりにくくなることは考えられますが、正しく服用しなければ逆に体に害を及ぼす可能性があるのです。
この記事では、細菌性腟炎の原因と発症した場合の対処法ついて解説します。
細菌性腟炎を発症するにはいくつかの原因があり、それぞれの対策法を知っておく必要があるので、今回紹介する内容をよく理解していただけたらと思います。
細菌性腟炎をよく知らないという方も、症状の詳細や原因をこの機会に知って、しっかり予防しましょう。
細菌性腟炎とは
細菌性腟炎というのは、膣内で複数の細菌が異常繁殖して起こる炎症です。
- トリコモナス
- カンジダ
- クラミジア
などの性感染症と症状が似ているために疑われることが多く、特定の原因微生物がないため判断が難しい病気とされています。
まずは、細菌性腟炎について詳しく説明します。
膣内の細菌バランスが乱れることで起こる
膣の中には、もともとたくさんの常在菌が存在しています。
通常は、膣の中に存在する乳酸菌(善玉菌)という菌が、腟の中を酸性にして外部から一般細菌の侵入を防いで、膣内を守ってくれるのです。
しかし、なんらかの原因で膣内に一般細菌が多く侵入してしまい、存在する細菌のバランスの崩れや膣内環境の乱れにより細菌性腟炎が発症してしまいます。
細菌性腟炎は女性だけの病気
細菌性腟炎は女性が発症する病気です。
しかし、細菌性腟炎の女性とコンドームがない状態で性行為をすると、膣の中の雑菌が男性にも移ってしまい、陰茎炎や尿道炎を起こす場合があります。
また、性行為によって女性の膣内の環境がより悪くなってしまったり、男性が持つ病原菌をさらに他の人に移してしまったりする可能性もあるでしょう。
細菌性腟炎の主な症状
女性全体の1割〜3割程度が罹患していると言われていますが、約半数が無症状であるため、気付かない人も多いです。
ですが、人によっては日常生活を送るうえで不便に感じる病気ですので、予防のためにも細菌性腟炎の主な症状を知っておきましょう。
おりものが増える
おりものとは、子宮頚部、子宮内膜、膣から出る酸性の分泌物で、膣の保湿と雑菌の繁殖を防ぐなど、女性の体を守る役割を持っています。
正常なおりものは透明もしくは乳白色をしており、おりものシートでカバーできる量です。
しかし、細菌性腟炎では、灰色または黄色のサラサラとした水っぽいおりものが大量に分泌されることがあります。
おりものの変化は、体の不調を知らせるサインでもありますので、いつもと違う変化を感じたら細菌性腟炎を疑ってみましょう。
おりものの臭いがきつくなる
正常なおりものは少し酸っぱいようなにおいがするのが特徴ですが、細菌性腟炎になると生臭い臭いを感じることがあります。
「魚が腐ったような臭い」と表現されることもあり、不快に感じる人が多いです。
痒みや痛みが生じる
細菌性腟炎では、下腹部痛や外陰部のかゆみや痛みをともなうことがあります。
外陰部のかゆみは、症状としてはそこまで重くならないため気付かない場合も多く、深刻な病気であるケースはほとんどありません。
しかし、赤みが出たりかぶれたりするケースもあり、不快に感じる人もいるでしょう。
細菌性腟炎を放置するとどうなる?
細菌性腟炎を放置した場合、自然治癒するケースもあります。
しかし、再発するリスクも高いです。
人によっては「骨盤内炎症性疾患」と呼ばれる重篤な合併症を引き起こすケースもあります。
また、妊娠中の女性が細菌性腟症を発症すると、早産のリスクが高まるなどの危険性もあるのです。
細菌性腟炎の主な原因
不快感を感じるだけでなく、合併症を引き起こす可能性のある細菌性腟炎を防ぐためには、発症する原因を知る必要があります。
そこで、細菌性腟炎を発症する主な原因を解説します。
原因は一つではありませんので、これから紹介する内容から自身が心当たりのあるものはないか確認しましょう。
原因①疲労やストレス
膣内は乳酸菌の働きによって保たれ、他の細菌が繁殖しないようになっています。
しかし、疲労やストレスが免疫力を低下させてしまい、腟の自浄作用が落ちてしまいます。
その結果、細菌のバランスが崩れて細菌性腟炎を発症してしまうのです。
また、睡眠不足も免疫力の低下につながり、細菌性腟炎の原因になってしまうので、注意しなければなりません。
原因②複数の異性と性行為をする
細菌性膣炎は、性行為がきっかけで発症するケースが多い病気で、複数のセックスパートナーがいる方はなりやすいとされています。
その理由は、性行為によって雑菌が腟に侵入することや、アルカリ性である精液によって膣内の状態が変化すると考えられているからです。
- 新しいパートナーができた
- 複数のパートナーがいる
- 性行為時に不潔な手で隠部に触れる・膣内に指を入れる
- 性行為時にコンドームを使用しない
- 女性へのオーラルセックス
などが発症のリスクとなります。
原因③子宮内避妊器具を使用している
IUD(子宮内避妊具)は、子宮の中に挿入して避妊できるようにする器具で「避妊リング」とも呼ばれます。
ピルを服用し忘れたり、避妊具の装着がうまくいかなかったりしても高確率で避妊できることから利用している女性は多いでしょう。
膣と肛門が近い位置にあるために、子宮内避妊具を使用している人は、膣の入り口部分が便などで汚染されて細菌性膣炎を発症する可能性があるのです。
原因④膣洗浄
膣の中を綺麗にしようと、膣洗浄を行う人も多いかと思いますが、膣を洗いすぎる行為も実は危険です。
膣洗浄をしてしまうと、必要な常在菌も一緒に流されてしまい、膣の中を守る菌がいなくなってしまいます。
清潔を保つことは良いのですが、洗浄のし過ぎも膣内の環境を乱してしまい感染リスクを上げてしまうと覚えておきましょう。
ビオフェルミンを飲めば細菌性腟炎が治るって本当?
「細菌性腟炎はビオフェルミン飲めば治る」「ビオフェルミンを膣内に入れると細菌性腟炎が良くなる」このような情報がインターネットなどで調べると出てきますが、実際はどうなのでしょうか?
ビオフェルミンの細菌性腟炎への効果について解説します。
薬剤は正しい使い方をしなければ効果を得られないだけでなく、なんらかの危険性が及ぶ場合もあるので、ぜひチェックしてください。
ビオフェルミンとは
医療用医薬品であるビオフェルミンは、腸内環境を整えるために服用する整腸剤で、錠剤タイプと粉タイプで菌の種類が異なります。
- ビオフェルミン錠剤…ビフィズス菌
- ビオフェルミン配合散…ラクトミン(乳酸菌)、糖化菌
また、ビフィズス菌やラクトミン(乳酸菌)を含有する整腸剤は市販薬としても複数の種類が販売されており、中でもビオフェルミン製薬の「新ビオフェルミンS」は代表的な市販薬として知られています。
ですが、医療用の市販薬には成分の含有量などの違いがあるため、全く同じものとは言えません。
腸内環境を整えることで予防効果は期待できる
ビオフェルミンは腸内環境を正常化する作用によって間接的に下痢、軟便、便秘、腹部膨満感などの腹部症状の改善に期待できます。
しかし、細菌性腟炎に即効性のある薬とは言えません。
一般的に細菌性膣症の症状を緩和したい場合の薬物治療としては
- メトロニダゾール
- クリンダマイシン
上記のような内服薬、膣錠が処方されることが考えられます。
ですが、腸をより良い環境に改善して発症のリスクを減らせる効果には期待できるかもしれません。
ビオフェルミンを膣内に入れるのは間違い
インターネット上では「ビオフェルミン錠剤を膣内に入れたら細菌性腟炎が治った」という口コミも見られますが、内服用の錠剤を自分で膣の中に入れるというのは正しい使い方ではありません。
膣錠と違って膣で溶けやすいようにつくられてはいませんし、腸内の善玉菌を増やす目的で服用する内服薬を膣内に直接入れて効果が得られるという科学的な根拠はないのです。
間違った使い方で体に悪影響を及ぼす危険性もあるため、ビオフェルミン錠剤を膣内に挿入するという行為はやめましょう。
疑いがあれば医療機関を受診するのがベスト
細菌性腟炎に似た症状はいくつかあるため、本当に細菌性膣炎かどうかは医療機関で診断を受けて確認しましょう。
正しい病名を知ることで、正しい服薬や最も最適な治療を受けられます。
また、細菌性腟炎は再発しやすいとも言われていますし、放置することで合併症を引き起こす危険性もあるため、早期発見が大事になります。
不安な方は早めに医療機関を受診した方が良いでしょう。
細菌性腟炎の予防方法
では、細菌性腟炎を発症しないためにはどのような点に気をつける必要があるのでしょうか。
細菌性腟炎になるリスクを減らす主な方法はこちらになります。
- 性行為時はコンドームを使用する
- 性行為の相手を限定する
- 子宮内避妊具の使用をやめる
- 膣は適度な洗浄を心がける
治療を受けることで数日で症状は改善するものの、二度、三度と罹患する可能性の高い病気です。
予防法についてそれぞれ詳しく解説しますので、未然に防ぎましょう。
性行為時はコンドームを使用する
細菌性腟炎の予防として有効なのは、雑菌が膣内に侵入するのを防ぐために性行為のときはコンドームを着用するということです。
さらに、男性が性行為の直前に、歯磨きと手洗いをすることで発症リスクを軽減できます。
コンドームの着用は他の性病の予防や望まない妊娠を避けることにもなりますので、男性側も自分だけではなく相手の健康や安全を守るためにも、しっかりコンドームを着用しましょう。
性行為の相手を限定する
過度な性行為や不衛生な性行為など、膣内環境を乱すような行為は控えるようにしましょう。
性行為の相手を限定し、さらにコンドームを着用することで発症リスクを大幅に軽減できます。
細菌性腟炎を発症すると、自分だけではなく相手にも悪影響を及ぼす危険性があると理解しておきましょう。
子宮内避妊具の使用をやめる
子宮内避妊具を必ずやめなければいけないということではありませんが、避妊方法としてはコンドームやピルなど、子宮内避妊具以外にも様々な方法があります。
それぞれのメリットやデメリットを理解して自分に相応しいものを利用してください。
そのうえで、子宮内避妊具を使いたい場合には、あらかじめ細菌性腟炎を発症するリスクがあると理解しておきましょう。
膣は適度な洗浄を心がける
過度な膣洗浄は細菌性腟炎の発症の原因となってしまうので、おりものの臭いがきつかったり、痛みや痒みが出ているからといって洗い過ぎないように注意しましょう。
しっかり洗うというよりも、ぬるま湯で短時間流す程度にとどめておくのがおすすめです。
性行為の後などで膣内を綺麗にしたいという場合には、デリケートゾーン専用の石けんを使用して優しく洗い、膣内の自浄作用を保つようにしてください。
細菌性腟炎には早めの診療を!
細菌性腟炎の原因と対処法について解説しました。
細菌性腟炎はその症状から性感染症と疑われるケースも多く、自己判断がしづらい病気であると言えます。
「細菌性腟炎はビオフェルミンを飲めば治る」という意見もありますが、まずは医療機関を受診して正しい診断を受け、それに適応した治療を受けるのが望ましいです。
また、再発などのリスクが高い細菌性腟炎は、発症を未然に防ぐことが重要です。
細菌性腟炎についてご存知ないという方も今回紹介した予防法をしっかり確認して、対策をとっていただきたいと思います。