歯列矯正をスタートする前は、多くの方が不安を持っているものです。
本当に歯並びがよくなるのか、イメージ通りに矯正できるのか、時間とお金をかけて大丈夫なのか……と不安に感じるかもしれません。
矯正をする前にシミュレーションができると、患者さんも安心して治療に取り組めるようになります。
歯並びのシミュレーションができるアプリや、クリニックで可能なシミュレーションについてまとめました。
歯並びシミュレーションアプリ
矯正後の歯並びをシミュレーションする手軽な方法として、アプリがあります。
こちらの2つのアプリをご紹介します。
- Smile View
- Meitu
アプリならスマホさえあれば、簡単にシミュレーションができます。
これから歯列矯正を検討している方、まだクリニックに相談していないけど矯正後の歯並びのシミュレーションをしてみたい、という方は、ぜひ試してみてください。
Smile View
「Smile View」とは、マウスピース矯正で人気のあるインビザラインのアプリです。
具体的な使い方は、以下のとおり。
1.眼鏡や帽子を外した状態で、正面から写真を撮ります。
2.撮影をしたら約60秒で、歯並びが整った状態のイメージ画像を確認できます。
自撮りだけでシミュレーションできるので、家族やお友達と試しに撮ってみるだけでも楽しめるでしょう。
インビザラインとは
インビザラインとは、アメリカのアライン・テクノロジー社により開発されたマウスピース矯正の一種です。
症例数の多いマウスピース矯正で、世界100ヵ国以上800万人以上の治療実績があります。
痛みが少なく、目立ちにくいので審美性にも優れています。
顎の発達をサポートする、子どもの矯正にも向いているといわれています。
Meitu
「Meitu」は、自撮りに特化したアプリで、歯並び以外の修正も可能です。
前髪を盛ったり、肌の色を変更したりなど、総合的に写真をかわいく加工できるアプリです。
歯並びの補正機能や、歯を白くする加工もできるので、矯正前のシミュレーションに利用してみてもいいでしょう。
ただし歯並び補正した写真を保存するには、有料プランになりますのでご注意ください。
加工や修正だけであれば、無料で利用できます。
クリニックでのシミュレーション
アプリで歯並びのシミュレーションをするよりも、具体的なシミュレーション方法です。
- 3Dシミュレーション
- 横顔のシミュレーション
歯列矯正をしているクリニックでも、導入している機械によってできるシミュレーションとできないシミュレーションがあります。
3Dシミュレーション
3Dシミュレーションとは、その名前の通り、口腔内の写真を3Dでシミュレーションできる方法です。
正面から、側面から、自由にビフォーアフターを確認できるので、イメージがつきやすいです。
例えばレントゲンやCTなどの検査だと、写真を読み解くのに専門知識が必要になるために、医師の説明がなければ理解するのは難しいでしょう。
しかし3Dであれば、誰が見ても一目で状況がわかりやすく、視覚的なイメージをつけるのには最適な方法といえます。
3D口腔スキャナー「iTero element」
3Dシミュレーションができる口腔スキャナーで、「iTero element」というのがあります。
マウスピース矯正のインビザラインのシミュレーションシステムで、歯をスキャンするだけの手軽な方法です。
下顎と上顎、噛み合わせの記録を撮るだけなので、所要時間は10分ほどと手軽な検査になります。
患者さんの負担を抑えて、高性能なシミュレーションができます。
横顔のシミュレーション
矯正による横顔のシミュレーションが必要になるのは、出っ歯や受け口、口ゴボなど、矯正によって横顔の変化があるであろうと予想される場合です。
側方頭部X線写真や歯並びのデータ、顔貌写真を元に、骨格や歯の動きを予測してシミュレーションをしていきます。
顔を横から見た、鼻から口元にかけてのラインを「Eライン」と呼び、美容の観点でも気にされる女性の多い部分です。
矯正シミュレーションの費用
3Dシミュレーションや横顔のシミュレーションは、クリニックでできるシミュレーションです。
歯列矯正は自由診療になりますので、シミュレーションにかかる費用もクリニックによります。
「検査・診断料」などに含まれていて、30,000円~60,000円程かかるでしょう。
矯正をする場合はシミュレーションを無料にするというクリニックもありますので、事前にクリニックの料金を確認しておくと安心です。
医療費のシミュレーション
歯列矯正は自由診療のため、治療費が高額になります。
しかし治療が必要だと判断された場合には、保険適用になるケースもあります。
日本矯正歯科学会のホームページで示されている、保険適用される条件はこちらです。
日本矯正歯科学会より引用
- 「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
- 前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療
- 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療
また治療が必要だと判断された歯列矯正の場合は、医療費控除の対象となる場合もあります。
医療費控除の対象になると、実際に治療費にいくらかかったのかがわかりにくくなります。
そのため、歯科矯正の治療費をシミュレーションできるサイトもありますので、気になる方は利用してみましょう。
矯正シミュレーションのメリット
矯正の仕上がりをシミュレーションできるのは、様々なメリットがあります。
- ゴールが確認できる
- モチベーション維持できる
- 納得して治療ができる
- 治療費も計画が立てられる
これらのメリットについて、ご説明します。
ゴールが確認できる
矯正後の姿が患者さん自身で確認できるのはもちろん、ドクターとゴールのすり合わせができるというメリットがあります。
仕上がりに納得できずに再矯正をする人もいますが、シミュレーションをしておけば安心して治療に取り組めるでしょう。
矯正前にシミュレーションを確認して、「もっとこうしたい」という希望があれば、先に伝えられます。
モチベーション維持できる
治療前にシミュレーションができていると、仕上がりの状態がイメージしやすいのでモチベーション維持につながります。
歯列矯正は1年~3年程度の時間がかかる場合もありますので、モチベーションの維持が難しいです。
実際に歯列矯正ではストレスを感じる場面も多く、挫折してしまう人もいます。
納得して治療ができる
治療前にシミュレーションが確認できていると、納得して治療に取り組めます。
「本当に歯並びが綺麗になるのかな」という不安や疑問を抱きにくく、ドクターとのすり合わせもできていますので信頼感もあります。
シミュレーションは、矯正の過程を確認できるので、治療中の安心感にもつながります。
治療費も計画が立てられる
治療費のシミュレーションをしておくと、治療費の支払いの計画も立てやすくなります。
治療費の支払いができずに、「矯正を断念しなくてはいけなくなった」という方もいます。
治療の方針や過程だけでなく、治療費の計画を無理なく立てておくのも大切です。
矯正シミュレーションの注意点
矯正シミュレーションは多くのメリットがありますが、デメリットはないのでしょうか。
注意しておくべき内容についても、お伝えします。
- 過信しすぎない
- ドクターの腕は大切
過信しすぎない
矯正シミュレーションは素晴らしい性能で、矯正後の歯並びが確約されたような気持ちになるかもしれません。
しかしあくまでもシミュレーションであると忘れてはいけません。
マウスピース矯正であれば、「装着時間を守る」など決められた通りに矯正を進める必要があります。
ドクターの腕は大切
矯正シミュレーションが優れていても、やはりドクターの腕は大切です。
矯正をしていくと、シミュレーション通りに歯が動かないという事態も起きます。
不具合がなくても定期的にクリニックに通い、過程を確認しながら矯正を進めていきましょう。
歯列矯正が早く終わる人とは
歯列矯正がかかる時間には、当然個人差があります。
その中でも早く矯正が終わる人の特徴がありますので、ご紹介します。
- 代謝が活発で歯が早く動いた
- 矯正部分が少なかった
- 舌癖や口周りの癖がない
- 虫歯などのトラブルがなかった
- マウスピースの装着時間を守った
- リテーナーを正しく使用した
代謝が活発で歯が早く動いた
歯の周りの代謝が早い人や、成長期の子供は、矯正が早く終わる傾向があります。
新陳代謝が高い人は、歯を支える歯槽骨の変化が早くなるので、歯も早く動くようになります。
そのため矯正期間は、代謝をよくするために少し生活習慣を見直してみましょう。
食生活を意識したり、質の良い睡眠を摂ると代謝がアップするでしょう。
矯正部分が少なかった
歯列矯正は全体矯正と部分矯正があります。
部分矯正とは、気になる一部分だけを矯正する方法で、全体矯正よりも早く終わります。
歯を動かす度合いが小さければ小さいほど、矯正の期間も短くなると考えていいでしょう。
舌癖や口周りの癖がない
歯並びは元々の歯の生え方が原因かと思われがちですが、舌癖や口周りの癖が影響しています。
- 舌を出す癖
- 歯に舌を押し付ける癖
- 舌の位置が悪い
- 口呼吸
- 頬杖
これらの癖があると、歯並びを整えるのに時間がかかりますし、癖を治さないとまた歯並びが悪くなってしまう可能性すらあります。
虫歯などのトラブルがなかった
虫歯や歯周病などのトラブルがあると、矯正を中断させて治療が必要になる場合もあります。
マウスピース矯正であれば取り外しが可能なので、すぐに虫歯の治療が可能です。
しかしワイヤー矯正の場合は、ワイヤーを取り外してから、虫歯の治療をしなくてはいけません。
矯正前には虫歯の有無も確認していますが、矯正器具がついていると虫歯リスクも高くなりますので、より虫歯に注意しなくてはいけません。
マウスピースの装着時間を守った
マウスピース矯正の場合は、1日20時間以上装着しなくてはいけません。
自由に取り外しができてしまいますので、装着時間を守れないと治療が予定通りに進みません。
マウスピース矯正の装着時間を守るのはもちろん、その他ドクターから指示があった場合は、その注意点を守るようにしましょう。
リテーナーを正しく使用した
矯正後に使用する、リテーナーという保定装置があります。
動いた歯が後戻りしてしまわないように使用する装置で、リテーナーをサボると歯が元の状態に戻ってしまう危険があります。
一般的には、矯正期間と同等の期間、リテーナー期間が必要です。
矯正に1年かかったのであれば、リテーナー期間も1年間が目安です。
シミュレーションを上手に活用して
歯列矯正の前にシミュレーションができるようになったのは、大変画期的な変化です。
患者さんとドクターで仕上がりを確認して、お互いに同じゴールに向かって矯正を進めていけるようになりました。
「仕上がりがイメージと違う」という失敗が少なくなり、モチベーションの維持もできるようになります。
ただしシミュレーションはあくまでも機械での予測にすぎません。
矯正を実際に進めていくのは、患者さんご自身とドクターです。
指示をしっかりと守って、シミュレーション通りに矯正を進めていけるように取り組んでいきましょう。