咀嚼筋の機能低下などで噛む力が衰えてしまうと、虫歯や認知症の発症リスクを高める恐れがあります。それでは、どのような方法を用いると噛む力を鍛えられるのでしょうか。トレーニングと食事の2種類に分けて噛む力を鍛える方法を解説し、噛む力を鍛えるメリットとあわせてご紹介します。
噛む力が弱くなる原因
噛む力が弱くなる原因としては、主に以下の2点が挙げられます。
<噛む力が弱くなる原因>
- 咀嚼筋の機能低下
- 栄養バランスの乱れ
まずは噛む力が落ちてしまうメカニズムを知っておきましょう。
咀嚼筋の機能低下
年齢を重ねるにつれて、噛む力の強弱を左右する「咀嚼筋」の機能が低下します。咀嚼筋とは食べ物を噛むときに働く筋肉の総称で、「咬筋」や「側頭筋」など4つの筋肉を表す言葉です。これらの咀嚼筋が機能しなければ、最終的には食べ物を噛むこと自体が難しくなってしまいます。
強く噛むことが難しくなったせいで、よく噛まずに食べたり、食べ物を丸飲みしたりすることで、さらに筋力が低下する悪循環に陥ることにも注意しなければなりません。とくに高齢者の方の場合、これが原因で誤嚥したり、食べ物を喉に詰まらせたりするケースも見受けられるため要注意です。
栄養バランスの乱れ
栄養バランスの乱れも、噛む力を低下させる原因のひとつです。たとえば「マグネシウム」が不足すると脱力感に襲われやすくなって食欲不振を招きますし、カルシウムが不足すると顎の骨が弱体化してしまいます。栄養バランスに気遣った食事を取ることにより、噛む力の低下を防ぎやすくなるのです。
噛む力を鍛えるメリット
噛む力を鍛えるメリットを5つご紹介します。
<噛む力を鍛えるメリット>
- 消化や栄養吸収が促進される
- 虫歯・歯周病のリスクが減る
- 食べ過ぎを防止できる
- 認知症の予防につながる
- 顎周りのシェイプアップにつながる
あらゆる面でよい影響が期待できるので、くわしく確認しておきましょう。
消化や栄養吸収が促進される
噛む力を鍛えることにより、咀嚼筋の機能低下を防ぎ、食べ物をしっかりと咀嚼してから飲み込む能力を維持できます。消化器官の負担を減らしやすくなり、消化不良に悩まされるリスクを引き下げることが可能です。
同時に栄養の吸収を促進できることも、噛む力を鍛えるメリットといえるでしょう。たとえばビタミンCは口腔粘膜から栄養素を吸収することがわかっています。咀嚼すればするほどたっぷりと栄養を吸収できるため、健康寿命を延ばす上でも役立つのです。
虫歯・歯周病のリスクが減る
虫歯・歯周病のリスクが減ることもメリットです。咀嚼中は、虫歯菌・歯周病菌の働きを抑える免疫物質を含んだ唾液の分泌を促進できます。この作用によって口内の除菌・殺菌効果を確保でき、さらに口腔内の汚れを洗い流したり、口臭を予防したりといった作用にも期待できるのです。
食べ過ぎを防止できる
ゆっくり咀嚼してから食べると、満腹中枢を刺激できるため、暴飲暴食を防ぎやすくなります。また、たくさん噛むと抗肥満効果を備えた神経物質「ヒスタミン」が放出され、太りにくくなることもメリットです。ついつい食べ過ぎてしまうことが多い方は、よく噛んで食べるように心がけるだけで改善できるかもしれません。
認知症の予防につながる
少し意外な効果としては、認知症予防を実現させられる可能性があることも噛む力を鍛えるメリットのひとつです。咀嚼を繰り返すと口周りの筋肉や頭部の骨が動き、血液の循環がよくなります。結果として脳神経が刺激されて活発になるため、認知症の予防につながる可能性があるのです。
また、がんや老化を予防する作用にも期待できます。咀嚼中に分泌される唾液には「ペルオキシダーゼ」というタンパク質が含まれており、活性酸素の抑制に役立つのです。活性酸素には発がん作用や老化を促進させる作用があるため、抑えることで若々しさを維持しやすくなります。
顎周りのシェイプアップにつながる
よく噛むと自然に顔の筋肉が鍛えられ、顎周りのシェイプアップにつながります。毎日の食事をシェイプアップの一環として捉えることで、顔周りがシャープになることは大きなメリットです。反対に咀嚼を蔑ろにしていると顔周りの筋肉が減り、たるみの原因になるため注意しましょう。
噛む力を鍛える方法【トレーニング編】
噛む力を鍛えるトレーニングとして有効なのは以下の3つです。
<噛む力を鍛えるトレーニング法>
- 頬のトレーニング
- 顎のトレーニング
- げんこつマッサージ
それぞれのやり方をわかりやすく解説します。
頬のトレーニング
頬を鍛えることで咀嚼力が高まり、食事中の噛み疲れを起こしにくくなります。
<頬トレーニングのやり方>
- 片方の頬を空気で膨らませて数秒間キープする
- 膨らませる頬を入れ替えて数秒間キープする
- 同じ作業を繰り返す
顎のトレーニング
顎のトレーニングを行うと、頬の筋肉を増強でき、噛む力を鍛えることができます。
<顎トレーニングのやり方>
- 顎を上下左右、前後に大きく動かし、それぞれ1秒間止める
- 徐々にスピードを上げながら繰り返す
- ガーゼを片側の奥歯の上に置いて軽く噛む
げんこつマッサージ
げんこつマッサージを行うと、口周りの血流を促進し、口を開きやすくさせるといった効果に期待できます。
<げんこつマッサージのやり方>
- げんこつを作り、第1関節と第2関節の間で側頭筋を押さえる
- そのまま円を描くように20秒間マッサージする
- マッサージする場所を少しずらして、20秒間のマッサージを2~3回繰り返す
噛む力を鍛える方法【食事編】
噛む力は食事でも鍛えられます。食事のメニューや噛み方を工夫するだけでも大きな効果に期待できるため、ぜひお試しください。
噛む力を鍛えるためのおすすめメニュー
噛む力を鍛えるメニューを作るコツは、何気ない食事に歯ごたえのあるものをプラスすることです。たとえば以下のようなメニューは、噛む力をアップさせるために有効的といえます。
<噛む力を鍛えるためのおすすめメニュー>
- 牛肉×ごぼうの甘辛炒め
- アーモンド入りキーマカレー
- きのこ尽くしのお味噌汁
- にんじん×じゃがいものシャキシャキサラダ
柔らかい食事に硬い食材を追加して、毎回の食事で咀嚼筋を鍛えましょう。
効果的な食べ物の噛み方
食べ方としてもっとも有効的なのは、歯の全体を使って咀嚼することです。前歯で噛みちぎり、奥歯ですり潰すようにしながら咀嚼しましょう。また、左右の奥歯をバランスよく使うように意識することで、両側の筋肉をバランスよく鍛えられ、顔のゆがみを防ぎやすくなります。
定期的に歯の健診を受けて、噛む力を維持しましょう
噛む力を維持するためのコツとしておすすめしたいのが歯の定期健診です。健診では虫歯や歯周病のチェックや歯石取りなどを行えるほか、正しい歯磨きの方法なども学べます。いずれも歯の健康を守るために重要な点検であり、1本でも多く歯を維持することにより、噛む力を長く維持することが可能です。
まとめ
噛む力を鍛えることで、消化や栄養吸収を促進できるほか、虫歯・歯周病のリスクを下げるといった効果も見込めます。この記事では、トレーニングと食事の両面から噛む力を鍛える方法を解説しているので、ぜひ参考になさってくださいね。
高輪クリニックでは、噛む力を維持するために不可欠な歯を守る定期健診に力を入れています。定期健診を利用することで、虫歯や歯周病が見つかったとしても初期段階で治療することが可能です。1本でも多くの歯を残すために、当院の定期健診をぜひご活用ください。