歯と歯茎の間にある溝のことを歯周ポケットと呼びます。歯周ポケットはどんな人にも存在するもので深さに歯個人差があり、歯周病の度合いが強い人ほど歯周ポケットが深めになります。それでは、歯周ポケットの深さを自力で改善することはできるのでしょうか。具体的な治療方法や、歯医者における専門処置の内容をわかりやすくお伝えします。自分の歯の状態を整えるためにもぜひ最後まで一読くださいね。
歯周ポケットとは
歯周ポケットとは、歯と歯茎の中間にある溝を指す言葉です。歯周ポケットは必ず存在し、深さには個人差があります。簡単にいうと、口腔内が健康な人の歯周ポケットは浅いのですが、歯周病を患っている人の歯周ポケットは深くなることが一般的です。
また、歯周病が進行するにつれて歯周ポケットがどんどん深くなることが特徴的です。歯周病の検査をする際は、歯周ポケットの深さを確認する「プロービング検査」を実施するほどであり、歯周ポケットの深さは歯周病の度合いをチェックするうえでの重大なヒントになります。
歯周病の原因は歯垢(プラーク)ですが、歯周ポケットが深い人の場合、歯垢や歯垢が石化した歯石が歯垢プラークの奥深くにたまりやすくなります。これは日常的なブラッシングだけでのケアは難しいため、歯周ポケットが深い人ほど歯周病にかかりやすくなりますし、重症化もしやすくなるためこまめにケアをすることが大切です。
歯周病と歯槽膿漏の違い
歯周病と歯槽膿漏は混同されやすいのですが、この2つには明確な違いがあります。歯周病が歯周病菌が歯茎に炎症を引き起こす事象そのものを指す言葉であることに対し、歯槽膿漏は歯周病の度合いを示す言葉のひとつです。
歯周病は進行性の病気であり、症状が軽度の場合は「歯肉炎」、中度の場合は「歯周炎」、重度の場合は「歯槽膿漏」と区別されます。歯槽膿漏は歯周病のなかでももっとも進行した状態のことで、この段階まで進行するとセルフケアだけでは完治させられません。
歯槽膿漏は、歯周病菌が歯の根元まで入り込んで歯槽骨を溶かしている状態です。歯槽骨は歯を支える土台としての役割を持っており、歯槽骨が失われると歯が移動してしまいます。最終的には歯が抜け落ちてしまうため、歯槽膿漏になる前に歯周病治療を行うことが大切です。
歯周ポケットは自力で治すことはできる?
歯周ポケットを自力で治せるかどうかは、歯周ポケットの深さによって異なります。結論として歯周ポケットの深さが3ミリ以下の場合は、正しいブラッシングで治す(改善する)ことが可能です。歯周ポケットの正しい磨き方をお伝えするので、この方法でブラッシングを行い、改善を目指しましょう。
<歯周ポケットの正しい磨き方>
- 毛先が極細の歯ブラシを用意する
- 毛先を歯茎に対して45度の角度に傾ける
- 歯周ポケットに差し込むようにしながら前後に振動させる
毛先が細いタイプの歯ブラシを選ぶことで、歯周ポケットを傷付けずに毛先を挿入し、歯周ポケットにたまった歯垢をかき出せます。歯ブラシは45度の角度に傾けた状態で持ちましょう。歯周ポケットのなかに毛先をやさしく挿入するイメージでブラッシングを行ってみてください。
歯ブラシを歯と歯茎の間に密着させたら、前後にわずかに移動させるイメージで動かします。これが「バス法」と呼ばれる歯磨きの方法です。その他の方法としては、歯ブラシを寝かせた状態で毛先を差し込むようにして汚れをかき出す「つまようじ法」も、歯周ポケットの掃除におすすめな方法です。
歯ブラシでは歯周ポケットを磨きにくい場合は、水圧で歯周ポケットの汚れを浮き出させる「口腔洗浄機」を利用してもよいでしょう。超音波洗浄ができるタイプの口腔洗浄機も販売されており、歯ブラシでは落とすことが難しい歯石も、付いたばかりのものであれば剥がせる可能性があります。
歯周ポケットの深さが4ミリ以上の場合は専門処置が必要になる
歯周ポケットの深さが4ミリ以上ある場合は、残念ながら自力での改善が難しい状態です。この場合は歯科医院で専門処置を受けて改善を目指しましょう。歯科医院における代表的な歯周ポケットの治療方法を4つ紹介します。
<歯周ポケットの代表的な治療方法>
- 代表的な治療方法①:スケーリング
- 代表的な治療方法②:デブライドメント
- 代表的な治療方法③:フラップ手術(歯周外科治療)
- 代表的な治療方法④:SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
各治療内容の詳細を順番にチェックしていきましょう。
代表的な治療方法①:スケーリング
歯周ポケットの内側にある歯石を除去する治療方法がスケーリングです。歯周ポケットの深さが4ミリ前後であり、歯周病があまり進行していない場合は、スケーリングと日ごろのブラッシング方法を見直すだけでも、歯周ポケットを改善させられる可能性があります。
スケーリングでは「スケーラー」と呼ばれる専用の機器を使って治療を行います。スケーリングの際に若干の痛みを感じる可能性がありますが、基本的にはスケーリングで麻酔を使うことはありません。痛みが気になる場合は、超音波の力で歯垢を除去する「超音波スケーラー」の利用が可能か確認しましょう。
代表的な治療方法②:デブライドメント
デブライドメントは、歯周ポケットやその周辺に付着している歯垢(プラーク)を除去する治療方法です。歯垢は歯に付いてから2~3日程度で石化して歯石に変わりますが、その前の段階で治療できる場合はデブライドメントを行います。歯石と違って比較的簡単に除去できるため、痛みを感じる可能性も低めです。
代表的な治療方法③:フラップ手術(歯周外科治療)
歯周病が進行しており、スケーリングとデブライドメントだけで改善できない場合は、フラップ手術で対応します。これは歯周病が進行した箇所を切開して、たまった歯垢・歯石を除去する手術です。フラップ手術には麻酔を使用するため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。
代表的な治療方法④:SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
SRPとは、先述したスケーリングと、歯根の表面を清掃する治療を組み合わせたものです。いわば強化版のスケーリングであり、より強力に歯垢・歯石を落とせます。基本的にはスケーリングのみで改善を図りますが、スケーリングだけでは完治を見込めない場合にSRPによる改善を目指します。
健康な歯周ポケットを保つために定期的な歯科診療を受診しよう
健康な歯周ポケットを保つためには、定期的な歯科診療の受診がおすすめです。先述したとおり、歯周ポケットは歯周病の進行とともに深くなります。3~6ヶ月に1度の頻度で定期健診を受けることにより、歯周病が悪化する前に治療に取り掛かれるため、歯周ポケットが深くなる前に改善を目指せるのです。
まとめ
歯周ポケットを自力で治せるかどうかは、歯周ポケットの深さによって変わります。歯周ポケットが3ミリ以内の場合はブラッシングによる改善を目指せますが、4ミリ以上の深さならば歯科医院に相談し、専門処置が必要です。
高輪クリニックでも、歯周ポケットを改善する治療を行っています。治療と同時にブラッシング指導なども行っており、再発防止に向けた根本改善も可能です。また、定期健診も承っておりますので、歯周病の早期発見・早期治療にお役立てください。お待ちしています。