「歯周病を治療すると糖尿病が治る」といった噂がインターネット上などに流れています。歯周病と糖尿病は、密接な関係があることは事実ですが、果たして本当に歯周病治療が糖尿病の改善につながるのでしょうか。
2つの病気がお互いの症状に与える影響や、糖尿病が歯周病を発生させる理由についても解説します。気になる人はぜひ最後まで一読ください。
歯周病の治療で糖尿病が改善するって本当?
歯周病の治療により、糖尿病が改善するという噂をインターネット上などで目にすることがあります。結論として、この噂は本当です。歯周病を治療すると血糖値を改善できるため、結果として糖尿病の症状を改善させられます。
歯周病の治療によって改善できるヘモグロビンA1cの改善度は、平均すると約0.4%であり、これは糖尿病の薬1剤分に相当する数値です。糖尿病手帳に歯科受診の記録を記載できるページが設けられていることからも、歯周病の改善が糖尿病に効果的であることがわかるでしょう。
糖尿病を患っている方で、現在は歯周病にかかっていないという方は、この状態を維持できるように歯周病対策を行わなければなりません糖尿病の三大合併症や心筋梗塞、脳梗塞とともに歯周病予防にも全力を傾けることにより、糖尿病の悪化を防ぎやすくなるのです。
歯周病と糖尿病の関係性
歯周病は糖尿病の「6番目の合併症」とも呼ばれています。糖尿病の患者さんは歯周病の治療が難しく、反対に歯周病の患者さんは血糖値のコントロールが難しくなるとされ、歯周病と糖尿病には密接な関係があるのです。
また、歯周病は糖尿病のみならず、心疾患や脳梗塞といったその他の病気を引き起こす場合があります。歯周病菌は口内から全身を巡り、あらゆる箇所にダメージを与える可能性があるのです。歯周病は口腔内のみならず、全身を蝕む可能性を秘めた病気なので、早期発見・早期治療を心がけましょう。
歯周病を早期発見するために有効なのは定期健診です。3~6ヶ月に1回の頻度で歯科クリニックへ通い、歯周病や虫歯のチェックを受けましょう。仮に歯周病にかかっていたとしても、定期健診を受けていれば糖尿病への影響が少ない初期段階で治療を行えます。
糖尿病が歯周病に与える影響
糖尿病が歯周病に与える影響について、1つずつ詳しく解説します。
- 歯周病にかかる確率が約2.6倍に上がる
糖尿病の患者さんは、細菌に対する抵抗力を減らしてしまう傾向にあります。また、口腔内が乾燥しやすい状態になることも重なり、歯周病菌が増殖しやすい口内環境を生み出します。糖尿病の患者さんが歯周病にかかる確率は、糖尿病ではない人と比べて約2.6倍も上がります。 - 歯周病が重症化しやすくなる
糖尿病の患者さんは、一般的に血糖コントロールが悪い人ほど合併症の進行が早まる傾向がみられます。歯周病は糖尿病の合併症のひとつです。その他の合併症と同じように歯周病も重症化しやすくなり、歯槽骨を溶かす「歯槽膿漏」に陥るリスクが高まるため注意しなければなりません。
歯周病が糖尿病に与える影響
先ほどとは反対に、歯周病が糖尿病に与える影響についても解説します。
- 血糖コントロールがしにくくなる
歯周病を持っている人、とりわけ歯周病の症状が重い人ほど血糖コントロールをしにくくなります。血糖コントロールは、6.5%未満なら「良好」、7.0%未満であれば「可」と判断されますが、これを上回る数値の場合は合併症を引き起こす確率が上がるため注意しなければなりません。 - 糖尿病の罹患率が約2倍に上がる
歯周病の患者さんは、糖尿病に罹患する確率が通常の約2倍にまで上がることがわかっています。歯周病によって生じた炎症が化学物質を生み出し、インスリンの働きを阻害することが主な理由です。結果として、歯周病の患者さんは糖尿病の罹患率が上がり、歯周病菌の進行も促進させてしまいます。 - 歯周病を改善することで血糖値を引き下げられる
糖尿病の患者さんで歯周病により歯茎で炎症が起こっている最中はインスリンの働きが阻害されてしまいます。しかし、歯周病を改善することで症状を反転させることが可能です。炎症を食い止めることによってインスリンの阻害をなくせるため、血糖コントロールを改善し、血糖値を引き下げられます。
糖尿病で歯周病を発症してしまう理由
糖尿病の患者さんはなぜ歯周病を発症してしまうのでしょうか。その理由は主に以下の3点です。
<糖尿病で歯周病を発症させてしまう理由>
- 口の中が乾燥しやすい状況になる
- 唾液や滲出液の糖分濃度が高くなる
- 細菌に対する感染防御力が低下する
各項目をわかりやすく説明していきます。
口の中が乾燥しやすい状況になる
糖尿病の患者さんは、糖代謝の異常によって唾液腺が障害を受け、唾液の分泌量が通常よりも少なくなってしまいます。乾燥が原因で口の中が乾燥しやすくなるのです。そして口の中が乾燥すると、歯周病菌が繁殖しやすい環境が整ってしまうため、歯周病を誘発させるリスクが高まります。
唾液には殺菌作用が含まれていますが、上記の理由により糖尿病の患者さんは充分な量の唾液を分泌できません。歯周病菌が繁殖しやすいことに加え、繁殖した歯周病菌に立ち向かうための抵抗力も失ってしまうため、糖尿病の患者さんは歯周病を発症させる可能性が上がるのです。
唾液や滲出液の糖分濃度が高くなる
唾液や傷からにじむ滲出液(しんしゅつえき)は血液から作られています。糖尿病の患者さんは、糖尿病に罹患している人と比べて血液中の血糖値が高い状態ですから、唾液や滲出液の糖分濃度が高くなります。これも、糖尿病の患者さんが歯周病を発症・進行させやすい理由のひとつです。
糖分濃度の高い液体が口内に多く存在する状態は、原理としては食べ物によって摂取した糖分が歯や歯茎に付着している状態と変わりません。糖分濃度の高い唾液・滲出液の存在は、それ自体が歯周病菌のえさとなり増殖させることにつながります。その結果、歯周病に罹患するリスクを高めてしまうのです。
細菌に対する感染防御力が低下する
糖尿病を患っている方は高血糖の状態です。そのため白血球の遊走能、貪食能、殺菌能といった機能が低下して、歯周病菌に対する感染防御力が低下してしまいます。さらに、血糖値が悪い状態で歯組織を修復する能力まで低下してしまうため、歯周病から身を守る能力全般が落ちてしまうのです。
まとめ
歯周病治療によって糖尿病が治るというインターネットでの噂は本当です。もう少し詳しくいえば、歯周病治療で糖尿病が完治するわけではありませんが、歯の健康を守ることが糖尿病の悪化を防ぎ、改善させることにつながります。現在は歯周病にかかっていないという糖尿病患者の方は、歯の健康の維持を心がけて、糖尿病を悪化させないように注意しましょう。
高輪クリニックでは、歯周病を早期発見するための定期健診を行っています。健診により歯周病が見つかった場合は速やかな治療が可能であり、根本を改善するための対策もしっかりと行えます。また、内科を併設しているため食習慣のアドバイスから体質改善治療など幅広く対応できます。糖尿病の悪化やその他の疾患を防ぐためにも、ぜひ当院による歯科健診や治療を受けてください。満足度の高い治療を提案します。