歯周病は決して珍しい症状ではなく、多くの人が罹患しています。大半の人が歯磨きなどのセルフケアを実践しているにもかかわらず、なぜ歯周病にかかってしまうのでしょうか。この記事では、歯周病の原因を網羅的にピックアップして解説し、歯周病になってしまったあとの対処法もあわせてお伝えします。
歯周病とは
歯周病とは、歯を支えている歯茎や歯槽骨を破壊する病気です。歯は歯槽骨との間にある歯根膜によって支えられていますが、歯周病が進行すると歯根膜や歯槽骨そのものが溶け出してしまいます。最終的には歯茎が歯を支えられなくなり、歯が抜け落ちてしまうのです。
歯周病の直接的な原因は、歯垢や歯石といった微生物因子です。これらの微生物が歯茎に炎症を引き起こさせ、歯周病へと発展させてしまいます。その他にも間接的な原因が歯周病を招くケースが見られるため、これについては「歯周病の原因」でくわしく解説します。
歯周病の症状
歯周病は進行する病気です。初期段階はごく一部に炎症を引き起こす「歯肉炎」で収まりますが、歯肉炎を放置すると炎症の範囲が広がり「歯周炎」になります。これがさらに進行した最終的な状態が「歯槽膿漏」で、最後には歯が抜け落ちます。
歯周病の原因
歯周病の直接的原因は歯垢・歯石です。しかし歯周病を根本的に予防するためには、なぜ歯垢・歯石がたまるのかという点も考えなければなりません。今回は「環境因子」と「宿主因子」の2種類に分けて、歯周病を発症させる間接的原因について解説します。
環境因子(生活習慣)
歯周病の原因を生み出す生活習慣は、主に以下の7つです。
<環境因子(生活習慣)>
- 口内の清掃不足
- 不規則な食生活
- ストレス
- 喫煙
- 口呼吸・歯ぎしりなどの口腔習慣
- 合わない義歯やかぶせ物
- 薬の影響
これらの環境因子がなぜ歯垢・歯石の蓄積を招くのか、わかりやすく解説していきます。
口内の清掃不足
歯垢や歯石がたまる最大の原因は口内の清掃不足、すなわち歯磨きの不足です。口内で細菌が増殖すると歯垢が発生し、歯垢を2~3日程度放置すると石化して歯石に変わってしまいます。歯石は通常の歯磨きだけでは落とせません。結果として細菌が歯と歯茎に長期間付着することになり、やがて炎症を引き起こすのです。
不規則な食生活
不規則な食生活を送り、栄養バランスが偏ると、歯と歯茎の健康状態が悪化します。歯周病菌に対抗できる力を残すためにも、バランスのよい食生活を送りましょう。また、甘い物や柔らかい物は歯につきやすく、歯垢を増やす原因になります。嗜好品の食べすぎには要注意です。
ストレス
ストレスがたまると全身の免疫力が下がり、歯周病菌が進行しやすくなります。また、イライラしているせいで食生活が乱れたり、睡眠が阻害されたり、歯磨きがおろそかになったりしやすいことにも注意しなければなりません。ストレス発散は身体の免疫力を高め、歯周病予防にも役立つのです。
喫煙
タバコには血管を収縮する作用があり、歯茎への血流が阻害されてしまいます。血流が滞ると歯茎に栄養素や酸素が行き渡りにくくなり、このせいで歯周病への抵抗力を失ってしまうのです。お口の健康のためにも禁煙したり、タバコの本数を減らしたりしましょう。
口呼吸・歯ぎしりなどの口腔習慣
口呼吸がクセになっていると、空気に触れて口内が乾燥しやすくなり、歯周病菌が繁殖しやすい環境が生まれるため要注意です。また、歯ぎしりは歯茎にかかる負担が大きく、炎症を引き起こしやすくなります。歯ぎしりを意識的に改善させることは難しいため、マウスピースの使用なども検討しましょう。
合わない義歯やかぶせ物
虫歯を治療した際に義歯やかぶせ物を使用した場合、これが歯に合わないと歯周病の原因になってしまいます。義歯やかぶせ物の素材が合わないと、その箇所のブラッシングが難しくなり、メンテナンス不足によって歯周病が引き起こされるのです。
薬の影響
薬の副作用によって歯周病になるリスクもあります。とくに「抗てんかん」「高血圧」「免疫抑制」「抗うつ薬」といった関連の薬は歯周病を発症・進行させやすいです。これらの薬を服用している場合は、歯の状態にも気を配りましょう。気になるときはかかりつけの担当医に連絡し、歯周病リスクの少ない薬に変更できないか相談してみましょう。
宿主因子(体の状態)
体の状態によって歯周病に発展する原因は以下の6つです。
<宿主因子(体の状態)>
- 歯並びや歯肉の形
- 不正な噛み合わせ
- ホルモンの影響
- 加齢
- 遺伝
- 病気の影響
こちらも順番にすべて解説します。
歯並びや歯肉の形
歯並びや歯肉の形によっては歯ブラシが届きにくい箇所ができてしまい、歯周病の抑制が難しくなります。とくに歯と歯の間の隙間が大きい場合は、食べ物のごみが挟まりやすくなるため要注意です。
不正な噛み合わせ
不正な噛み合わせがある場合、歯で口内を傷付ける「咬合性外傷」というトラブルが起こりがちです。こうして負った傷口に細菌が付着・侵入して歯周病へと発展することもあります。
ホルモンの影響
歯周病菌のひとつである「プレボテラ・インターメディア」は、女性ホルモンの一種「卵胞ホルモン」を栄養源として増殖します。女性の場合、更年期や妊娠中にホルモンバランスが崩れる可能性が高く、こういったタイミングではとくに歯周病への注意が必要です。
加齢
加齢によって歯茎が後退する場合があります。歯茎が後退すると歯根が露出し、歯周病菌に侵されやすくなるため注意しなければなりません。1度後退した歯茎が自然と元の状態に戻ることはほとんどなく、早めの治療が必要です。
遺伝
珍しいケースではありますが、歯周病患者のなかには遺伝的な要因が大きく関与している人もいます。遺伝が原因の場合、若いうちから症状が重症化しやすいとされているため、早期発見・早期治療が予防に向けた大きなポイントです。
病気の影響
糖尿病や関節リウマチなどの慢性疾患を持つ人や、骨粗しょう症、ダウン症の患者、そして肥満状態の人は歯周病の発症率が高いとされています。また、白血病やエイズに罹患している人も、歯茎からの出血といった症状が発生しやすくなります。
歯周病になってしまった場合の治療方法
歯周病になってしまった場合は、まず歯垢や歯石を除去する「基本治療」で改善を試みます。歯石・歯垢の除去は「スケーリング」と呼ばれ、専用の器具や超音波を使って歯石・歯垢を取り除くことが一般的です。そのあとはセルフケアを行い、歯周病の再発を防ぐようにします。
スケーリングだけで歯周病を改善できない場合は「外科治療」を追加することで改善を目指せます。歯槽骨が溶けている場合は再生療法を取り、改善が見られた場合は定期的なメンテナンスを行いながら再発を防止するのが一般的な歯周病治療の流れです。
ただし個人差で治療が長引いたりする場合もあるので、不明な点はその都度確認をしましょう。
まとめ
歯周病の原因は環境因子と宿主因子にわかれます。一見して歯とは無関係なことでも歯周病リスクにつながる場合があるため、生活習慣を見直すなどして改善を図りましょう。
高輪クリニックでは、対症療法と根本改善を組み合わせた治療を実施しており、歯周病が再発しにくい状態を生み出すこともできます。
現在はの状態が気になっている人はぜひ一度ご相談ください。