長い期間をかけた歯列矯正が終わったと思ったら、次はリテーナーをつけなければいけません。
「早く装置を外して解放されたい」と感じている方もいるかもしれません。
そこで「リテーナーをさぼるとどうなるのか」「リテーナーの種類や正しいお手入れの方法」など、歯列矯正後のリテーナーについてまとめました。
リテーナーをつける理由
歯列矯正が終わった後に、「リテーナー」という保定装置を使用します。
リテーナーは歯並びを定着させるために重要な役割をしており、後戻りという歯並びが矯正前に戻ってしまう現象を防ぎます。
歯列矯正の直後は、綺麗な並びに見えてもまだまだ不安定です。
歯を支える骨が固まっていないので、歯列矯正と同じくらいの期間、保定期間が必要になります。
リテーナーの装着期間と時間
リテーナーはどのくらいの時間や期間、装着が必要なのかをご紹介します。
- リテーナーの装着時間
- リテーナーの装着期間
- 装着時間は調整可能
リテーナーの装着時間
歯列矯正が終わった直後の歯は、元の状態に戻ろうとする力が働いています。
最初は1日20時間以上装着する必要があり、1日のほとんどの時間でリテーナーを装着していなければいけません。
お手入れや食事の時間はリテーナーを外しますが、ほぼつけっぱなしです。
取り外しが可能なのでめんどくさくなってしまうかもしれませんが、後戻り防止のために必要な時間です。
リテーナーの装着期間
リテーナーの装着期間は歯列矯正と同期間が目安になります。
だいたい1~3年が一般的な期間になり、平均的には2年程度だと覚えておきましょう。
矯正をしていた頃と同様に、歯科医院への定期的な通院も必要です。
装着時間は調整可能
歯列矯正直後は、1日20時間以上リテーナーの装着が必要とお伝えしました。
しかしリテーナーを始めて期間が長くなり、歯を支える骨が安定してくると装着時間を減らしていけるようになります。
夜寝ている時間だけや週2~3回など、リテーナーを着ける時間を少しづつ減らしていけます。
リテーナーの装着を初めてから6ヶ月程度が目安となりますが、自己判断せずに歯科医師からの指示で装着時間を減らしていきましょう。
リテーナーをさぼってしまうと出てしまう影響
美しく矯正した歯をしっかりと定着させていくために不可欠なリテーナーですが、うっかりさぼってしまった場合は以下のような影響が出ます。
- 後戻りの原因
- 再装着で痛みを感じる
- リテーナーの再作成が必要
- 再び歯列矯正が必要
後戻りの原因
歯列矯正が終わった直後は、歯が後戻りしやすい時期です。
そのため歯列矯正直後のリテーナーを1日でもさぼってしまうと、後戻りの原因になってしまうかもしれません。
矯正は終わっていますので、自分で見ると歯並びは綺麗です。
数時間であればさぼっても問題なさそうに見えますが、油断は禁物です。
後戻りしてしまうと、リテーナーが合わなくなってしまいますので、正しい装着時間を守りましょう。
再装着で痛みを感じる
リテーナーは矯正された歯並びに合わせて作られています。
リテーナーを装着して痛みを感じるようであれば、すでに後戻りが始まってしまっている可能性があります。
リテーナーの再作成が必要
リテーナーが合わなくなると、再作成が必要です。
作り直しが必要になると、費用もそれだけプラスでかかってしまいますし、時間もかかってしまいます。
再び歯列矯正が必要
リテーナーを装着していない時間が長時間になると、歯列矯正の後戻りが進んでしまいます。
最悪の場合は、再度の歯列矯正が必要になります。
せっかく時間とお金をかけてやってきた矯正が無意味となってしまう可能性があるので、リテーナーを正しく装着しましょう。
リテーナーをさぼった時の対処法
リテーナーをさぼった時の対処方法には、以下のパターンがあります。
- 違和感なく装着できる場合
- 違和感があり装着できない場合
- リテーナーの置き忘れや破損
違和感なく装着できる場合
リテーナーをさぼっていても、違和感なく装着できる場合はそのまま使用します。
痛みを感じずに装着できるようであれば、後戻りの心配はないと考えていいでしょう。
多少歯が移動してしまっているかもしれませんが、リテーナーを再装着すれば治せる範囲です。
違和感があり装着できない場合
リテーナーを着けた時の違和感とは、痛みや浮いてしまう状態です。
正しく着用できないリテーナーはもう使用できませんので、新しいリテーナーが必要です。
さらに歯並びが崩れてしまわないよう、すぐに歯科医院で相談をしてください。
リテーナーの置き忘れ・破損
リテーナーの置き忘れや破損など、装着できないという状態であれば、すぐに作り直します。
置き忘れや、破損してから時間が経っているようであれば、まずは歯科医院で歯並びを診てもらい、リテーナーの相談をしていきましょう。
リテーナーの種類
リテーナーには、種類があり、それぞれに特徴があります。
リテーナーの種類について、ご紹介します。
- ホーレータイプ
- ベックタイプ
- リンガルリテーナー
- スプリングリテーナー
- クリアリテーナー
- インビジブルリテーナー
- フィックスタイプ
- トゥースポジショナー
どのタイプのリテーナーを使用するかは、主治医と相談してください。
ホーレータイプ
前歯を取り囲み、前歯を重点的に動かなくするリテーナーで、一般的に使用率の高いタイプです。
前歯の表面側のみにワイヤーが通っていますので、ベックタイプよりも見た目が気になりません。
患者さんが自分で取り外しができて、歯を抜いていない矯正後に用いられるケースが多いリテーナーです。
ベックタイプ
全ての歯をワイヤーで固定して、内側からプラスチックで覆うタイプのリテーナーです。
取り外し可能で、抜歯をした矯正後に用いられるケースが多いです。
奥歯までワイヤーがかかりますので、笑ったときにはワイヤーがしっかり見えるリテーナーです。
リンガルリテーナー
犬歯間リテーナーともよばれ、犬歯と犬歯の間を裏側でワイヤーで固定するリテーナーです。
取り外しできるタイプもありますが、固定タイプもあり、虫歯や歯周病などのケアも重要です。
スプリングリテーナー
下顎前歯の4本に使われるリテーナーで、保定装置としてではなく、矯正装置としての使用も可能です。
矯正装置としての機能もありますので、多少歯並びが戻ってしまった際にも用いられます。
クリアリテーナー(マウスピースタイプ)
クリアリテーナーという名前の通り、クリアカラー(透明)のリテーナーです。
透明で目立ちにくいため、仕事柄ワイヤーが見えたくないという人も、安心して着用できます。
薄いアクリル製の樹脂やラバー素材でできていて、壊れやすいというデメリットがあるので、着脱やお手入れの際には取扱いに注意しましょう。
インビジブルリテーナー(マウスピースタイプ)
奥歯から前歯まで全体を覆うようなリテーナーです。
ソフトリテーナーともよばれるほどに柔らかく、壊れやすいタイプです。
繊細で壊れやすいので、噛み癖や歯ぎしりの癖がある方には向きません。
フィックスタイプ
前歯の裏側に専用の接着剤をつけて固定してしまうリテーナーです。
取り外し不可ですが、目立ちにくいタイプなので、付け忘れなどの心配はありません。
長期間つけっぱなしなので、虫歯や歯周病には注意しましょう。
トゥースポジショナー
シリコンでできていて、柔らかく使いやすいリテーナーです。
保定装置としても、矯正装置としても使用可能です。
リテーナーの費用
歯列矯正は保険適用外なので、クリニックにもよりますが、リテーナーの費用は5,000円~60,000円程度となります。
歯科医院によっては、矯正費用として治療費の中に入っている場合もあります。
さらに、リテーナーの装着期間は、保定観察料として通院費用がかかる場合もあります。
リテーナーでの悩み
リテーナーを正しく使用するためには、食事中の注意点やお手入れについても知っておきましょう。
- 飲食時の着脱について
- しゃべりにくく活舌が悪くなる
- リテーナーのお手入れについて
飲食時の着脱について
リテーナーを着けながらの飲食は基本禁止です。
固定タイプのリテーナーの場合は例外ですが、取り外しができるリテーナーであれば食事の際は外します。
リテーナー装着時は、水や無糖の飲料のみ可能で、ジュースなども避けた方がいいでしょう。
もしリテーナーを装着したまま食べてしまったら、気付いた時点でリテーナーを外して汚れを拭き取ります。
リテーナーをつけたまま食事をすると破損の原因にもなりますので、注意しましょう。
保定期間中に注意したい食べ物
リテーナーを外せば食事の制限はありませんが、硬い食べ物は刺激を受けやすいので注意しましょう。
歯の矯正中は骨の新陳代謝が起きていますので、痛みを感じる場合があります。
煎餅やスルメ、バゲットなどは意識的に食べないようにするか、注意して食べるようにしてください。
しゃべりにくく活舌が悪くなる
リテーナーのタイプによっては、舌が当たって発音しにくい、活舌が悪くなるという患者さんもいます。
プレートタイプのホーレータイプやベックタイプのリテーナーの方は、特にしゃべりにくいと感じるようです。
マウスピースやフィックスタイプは比較的活舌の問題は少ないようですが、どなたも3週間程度で慣れてきますので、使用しながら様子をみてみてください。
リテーナーのお手入れについて
着脱可能なリテーナーは、お手入れも必要です。
リテーナーのお手入れの注意点は以下の2つ。
- 歯磨き粉はNG
- 熱湯につけない
破損してしまうと新しいリテーナーを作り直ししなくてはいけなくなってしまいますので、大切に使いましょう。
歯磨き粉はNG
リテーナーは柔らかい歯ブラシで、リテーナー専用の洗浄剤を使用して洗浄します。
歯磨き粉には研磨剤が含まれていますので、リテーナーに傷がつく原因となってしまいます。
普段の歯磨きの延長でリテーナーをお手入れしたくなってしまうかもしれませんが、歯ブラシは別の物を用意します。
リテーナーに傷がつくと汚れや着色の原因となりますので、お手入れの際も丁寧に扱いましょう。
また金属部分のあるリテーナーに酸性の洗浄剤を使うとサビの原因になりますので注意してください。
熱湯につけない
リテーナーを洗浄する際には、ぬるま湯か水を使用します。
お湯や熱湯はリテーナー変形の原因になってしまいます。
煮沸消毒も同様の理由でできません。
歯並びの後戻りの原因
歯並びが後戻りしてしまうのは、リテーナーを装着していないからです。
ではリテーナーを装着しないと、どのようなことが起きて歯並びが崩れてしまうのでしょうか。
- 外からの力がかかる
- 口腔習慣の問題
- 噛む力
- 親知らずによってかかる圧力
外から力がかかる
頬杖をついたり、横向き枕で寝るなどの日常的な無意識の動作で、歯並びが変わっていく場合もあります。
これらは習慣になっていて、自分では気づきにく、なかなか改善できない人もいます。
何の装置もついていない歯は、数gの力でも動くといわれています。
人間の頭の重さは約5kgといわれていますので、頭の向きや頬杖の習慣に心当たりがある方は覚えておきましょう。
口腔習慣の問題
舌の動かし方にも癖が出ます。
例えば、舌を前に出すような癖がある方は、歯と歯の間に隙間ができたりします。
リテーナーを使っている保定期間中は、特に歯が戻りやすいので口腔習慣の癖がある方は注意しましょう。
噛む力
人間の歯は少し前向きに生えていて、前方方向に噛む力がかかっています。
少しづつですが、長い時間をかけて歯は前に移動していき、前歯の空間がなくなるとガタガタの歯並びになってしまう場合があります。
親知らずでかかる圧力
親知らずが横向きに生えてきた場合は周囲の歯を押してしまうため、歯並びが悪くなる場合もあります。
親知らずが綺麗に生えてくる場合は問題ありませんが、矯正後に親知らずが生えて歯並びに悩まされるケースもあるでしょう。
リテーナーはさぼらずに正しく装着しましょう
歯列矯正後のリテーナーは、大切な役割をしています。
リテーナー装着期間が終わるまで、歯列矯正が終わったとはいえません。
取り外しが可能なリテーナーは、外食時や旅行でめんどくさくなってしまう人もいるでしょう。
しかしこれから先もできるだけ長く美しい歯を保ちたいのであれば、正しく着用して治療をしていくのが1番の近道です。