歯並びや噛み合わせを改善するための歯科矯正ですが、「矯正治療をしたら痩せた」「ダイエット効果があった」という声を聞いた方も多いのではないでしょうか?
今回は、矯正治療によって本当に痩せることがあるのかについて詳しく解説します。
結論として、様々な理由によって矯正治療を行なったことで痩せる可能性はあり得ますが、ダイエット目的で行うものではありません。
歯科矯正を検討している方はこの記事を読んで、歯科矯正で痩せる理由について正しく理解していただけたらと思います。
また、痩せることだけでなく矯正治療を受けて歯並びを改善することで得られるメリットについても紹介しますので、どのような目的で矯正治療を受けるものなのかを知りましょう。
矯正治療で痩せる?
歯列矯正は、歯並びが悪いことで起こる様々な悩みやトラブルを解説するための治療法です。
矯正装置を装着し、時間をかけてゆっくりと力をかけて歯を少しずつ動かし、歯並びや噛み合わせを調節していきます。
そのような治療を行う歯列矯正ですが、「矯正をして痩せた」という噂や体験談を聞いて気になっている方も多いのではないでしょうか。
まずは、矯正治療がダイエット法として成り立つのかをお話しします。
矯正治療で痩せることはある
実際、矯正治療中や矯正後に体重が減って痩せる人は少なくありません。
本来は痩せるために行うものではありませんが、矯正治療を行うと、様々な理由から結果的に痩せる可能性もあるのです。
歯科矯正はダイエットにはならない
歯科矯正が直接的な痩せる原因にはならないため、ダイエット効果を期待して治療を行うのは間違いです。
矯正を終えて必ずしも痩せるとは限りませんし、
- 保険適用にならないことが多い
- 治療中の見た目良くない
- 食事を際は食べ物が詰まりやすい
- 歯磨きがしにくい
- 定期的に通院する必要がある
上記のような不便な面もあります。
治療後はそれらを上回るメリットがあるのは事実ですが、自分の目的に合った場合に歯科矯正を検討しましょう。
矯正治療で痩せる理由
矯正治療によって痩せるのには、以下のような理由が考えられます。
- 痛くて食欲が出ない
- 矯正装置の違和感や食べづらさで食事が減る
- 間食が減る
- 糖分のある飲み物をあまり飲まなくなる
- 治療後にしっかり噛むことができる
- バランス感覚が良くなり運動能力が上がる
- フェイスラインがスッキリして痩せて見える
それぞれ詳しく解説しますので、確認してみましょう
痛くて食欲が出ない
ワイヤー矯正では、常に矯正装置をつけた状態です。
特に、矯正装置をつけたばかりの時期は強い痛みが生じる傾向にあります。
噛むと痛みが生じるので、ゼリーやヨーグルトなどの手軽なものしか食べられなかったり、食事の量が減ったりすることがあり、摂取カロリーが消費カロリーよりも少なくなると、結果的に体重が減って痩せると言えるでしょう。
なぜ矯正で痛くなるのか
矯正治療では、歯に力を加えることで歯を動かしますが、歯が移動するときに痛みが生じる場合が多く、歯が動き始めの一週間程度が痛みを感じやすくなります。
特に硬いものを食べると歯が痛むので、その間は食欲がなくなってしまう人が多いです。
他にも、矯正装置が口腔内に当たることがあり、痛みが生じます。
ですが、基本的には慣れとともに痛みや違和感を感じなくなるケースが多いです。
矯正装置の違和感や食べづらさで食事が減る
矯正装置をつけると、口の中に異物をつけているような違和感をもちます。
マウスピース矯正の場合は食事の際に装置を外すので問題ありませんが、ワイヤー矯正の場合ですと装置の違和感や歯と装置の間に食べ物が挟まりやすいことから食べづらいと感じやすいです。
そのため、食事量が減り、結果的に痩せていく可能性があります。
間食が減る
マウスピース矯正の場合、マウスピースの取り外しができるので食事はしやすいのですが、食事をして再び装置を装着する前の歯磨きは欠かせません。
ワイヤー矯正の場合でも、歯と装置の間にものが挟まって虫歯になりやすいとされているため、大事な歯を守るために食事の後は毎回歯磨きをする必要があります。
ですが、学校や仕事があると何かを食べる度に歯磨きをするのは現実的ではないですよね。
そのため、歯磨きをするわずらわしさから食事の回数や間食が減って痩せるケースがあります。
糖分のある飲み物をあまり飲まなくなる
マウスピース矯正の場合、マウスピース装着中に飲食できるものが制限されており、基本的に水や無糖の炭酸水しか飲むことができません。
マウスピースをつけたまま甘いジュースなどを飲むと歯とマウスピースの間に糖分が溜まりやすくなり、虫歯になるリスクがあるほか、着色汚れの心配があるからです。
そのため、普段から糖分のある飲み物を好んで飲んでいたという人は、矯正治療中は糖分を含む飲み物を摂取する回数が自然と減り、痩せやすくなるでしょう。
治療後にしっかり噛むことができる
噛み合わせが良くなって咀嚼能力が改善されると咀嚼回数が増え、短い時間で脳が刺激されて満腹感が得やすくなります。
その結果、食事の量が減って痩せやすくなるのです。
また、しっかり噛んでから飲み込むため、唾液や胃液の分泌が促進されて消化されやすくなるというメリットもあります。
バランス感覚が良くなり運動能力が上がる
痩せるためには食事を気をつける他に運動も大切なポイントですが、歯並びを良くしてしっかり噛みしめられるようになると、骨格筋に影響を与え筋力がアップしたり、体の軸がブレにくくなって、バランスが取りやすくなったりします。
つまり、結果的に運動機能が向上するために痩せやすい体になるのです。
実際に、自身のベストのパフォーマンスをするために歯列矯正を行うスポーツ選手もいます。
フェイスラインがスッキリして痩せて見える
矯正治療を行うこと自体に体重の変化は期待できませんが、顔周りがスッキリして痩せて見えるというケースもあります。
実際に矯正治療を受けて「小顔になった」と感じる患者さんも多くいるのです。
もちろん、全ての人のフェイスラインに変化があるわけではありません。
では、どのような場合に矯正治療で痩せて見えることがあるのか、その特徴を紹介しますので、皆さんに当てはまるのかご確認ください。
痩せて見える人①顔の筋肉が発達していてエラが張っている人
顔の筋肉のバランスが崩れていることが原因でエラが張っている場合は、噛み合わせの問題であると考えられます。
矯正治療によって正しい噛み合わせにすることで、歯全体でバランス良く噛めるようになります。
顔の筋肉バランスが良くなり、筋肉への過剰な負担が軽減されることでエラの張りが抑えられ、スッキリした見た目になることがあります。
痩せて見える人②顔に歪みがある人
噛み合わせが悪いと、食事をするときに左右どちらか一方だけでものを噛んでしまうことが多いです。
そのような食事の仕方を続けていると、顔の筋肉のバランスが崩れ、顔が歪んでしまうことがあります。
矯正治療により、噛み合わせが良くなると食べ方も変わるので、顔の左右のバランスが整えられ、スッキリとした顔立ちになることがあるでしょう。
痩せて見える人③出っ歯の人
出っ歯の人は、唇が前の方に出てしまうことから顔が大きく見えてしまうことがあります。
矯正治療を受けると、前歯が後ろの方へ下がり、それにともなって上下の唇も後ろへ下がるため、横顔がスッキリして綺麗に見えるようになるかもしれません。
また、出っ歯の人は口を閉じようとすると歯が邪魔をして鼻の下が伸びやすく、面長に見えることがあるのですが、出っ歯を改善して口元が後ろに引っ込むことで、小顔効果も期待できるでしょう。
痩せて見える人④親知らずの抜歯が必要な人
歯列矯正では、親知らずが他の歯を圧迫していたり、噛み合わせを悪くしていたりする場合には、親知らずを抜くことがあります。
親知らずを抜くと、歯を失った顎の骨は少しずつ痩せていき、結果、フェイスラインがスッキリすることもあり得るのです。
歯列矯正の目的やメリット
歯列矯正を行うことで痩せる可能性があるということをお伝えしてきましたが、必ずしも痩せるとは限りませんし、矯正を検討している方は本来の目的を見失ってはいけません。
歯列矯正の目的は主に以下の5つです。
- 見た目の改善
- 歯磨きをしやすくして虫歯を予防する
- 噛み合わせを良くする
- 正しく発音できるようにする
- 健康状態を良くする
それぞれ詳しく説明しますので、どのような目的で歯列矯正が行われるのか、どのようなメリットがあるのかをご確認ください。
見た目の改善
悪い歯並びには、
- 出っ歯
- 受け口
- ガタガタの歯並び
などがありますが、歯並びが悪いことで自分の見た目にコンプレックスを抱えてしまう場合があり、中には人と関わることに苦手意識を持ってしまう人もいます。
歯列矯正によってコンプレックスであった歯並びが改善されることで、自分に自信を持てるようになり、人との関わりも積極的になる方も多いです。
歯磨きをしやすくして虫歯を予防する
歯並びが悪いと、歯磨きをしたときに歯ブラシが隅々まで行き届かずに、磨き残しが増えてしまいます。
そうすると、虫歯や歯周病の原因となり、大切な歯の寿命を短くするばかりか、最悪の場合抜歯せざるを得なくなることも考えられるのです。
歯列矯正で歯並びを改善することができれば、歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病などの歯の病気にかかるリスクを減らすことができます。
噛み合わせを良くする
歯には、ものを噛んだりすり潰したりする役割がありますが、上の歯列と下の歯列が正常に噛み合っていないと歯や口周りの筋肉、顎の関節が機能的に働かず、それぞれに過剰な負担を与えることになります。
ものがうまく噛めないだけでなく、
- 頭痛
- 肩こり
- 顎関節症
- 体調不良
- 顔の歪み
などの症状を引き起こす可能性もあるのです。
歯列矯正によって噛み合わせが良くなれば、しっかり噛んで食べられるようになるほか、上記のようなトラブルが発生するのを防げます。
正しく発音できるようにする
歯並びが悪く、歯と歯の間に隙間がある状態の人は、発音する際に空気が漏れて正しく発音できないケースがあります。
特に「サ行」や「タ行」がうまく発音できない人は、歯並びに問題がある場合が多いです。
歯列矯正をして歯と歯の隙間がなくなると、しっかり発音できるようになるでしょう。
健康状態を良くする
歯並びが原因でしっかり噛めなくなると、胃腸に大きな負担がかかります。
歯列矯正によって嚙み合わせが改善されると、しっかり咀嚼できるようになり、唾液の機能がうまく働くことで消化吸収を助け、胃腸への負担を減らすことになります。
また、歯並びや噛み合わせが悪いと、全身に負担がかかり、頭痛や肩こりを引き起こす可能性があります。
しかし、噛み合わせが良くなることで体の不調が改善され、健康状態が良くなるという嬉しいメリットもあるのです。
メリットが多いが痩せるために矯正治療を受けるのはNG!
矯正治療で痩せる理由について解説しました。
歯列矯正を行うと、以下の理由から痩せる可能性があります。
- 痛くて食欲が出ない
- 矯正装置の違和感や食べづらさで食事が減る
- 間食が減る
- 糖分のある飲み物をあまり飲まなくなる
- 治療後にしっかり噛むことができる
- バランス感覚が良くなり運動能力が上がる
- フェイスラインがスッキリして痩せて見える
ですが、歯列矯正の本来の目的は歯並びや噛み合わせを整えるものであり、歯列矯正そのものに痩せる効果はないため、ダイエット目的で利用するのはおすすめできません。
歯列矯正は、歯並びや噛み合わせを良くして見た目を改善したり、虫歯を予防したり、ものをうまく噛めるようにしたりする目的なので、本来の目的に合わせた矯正治療を行いましょう。