過敏性腸症候群(IBS)は腫瘍や炎症、潰瘍などの器質的異常が認められず、大腸の蠕動運動の低下など機能性の異常のみが認められる病気です。下痢または便秘、下痢と便秘を交互に繰り返す、ガス漏れが続くといった症状が長期に渡りますが、なかなか完治に至らず、一度は改善してもまた再発してしまう傾向にあります。
これまでの消化器科などでの一般的な治療方法は一定の効果はあるものの、対処療法が中心となっています。近年、根本的な改善が見込めると話題の最新の治療法である「腸内フローラ治療」はとても高い治癒率で注目を集めています。
過敏性腸症候群(IBS)に罹患するメカニズムや症状とは
過敏性腸症候群( IBS)はストレスとの関係が深い病気です。ストレスによって不安や緊張、悲しみなどの感情が起こりますがこの感情は大脳辺縁系というところで生み出され、視床下部に影響を与えます。視床下部は体内のコントロールを司る役割を果たしており、ここから自律神経を通して指令が出されます。
しかしストレスによって視床下部から自律神経への伝達内容に異変が生じると大腸の働きが活性化したり鈍くなったりして正常な動きではなくなってしまいます。脳と腸は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、脳で感じたストレスは腸に伝わって反応し、逆に腸の反応も刺激として脳に伝わります。
過敏性腸症候群の症状の原因は、大きく分けて2つと考えられています。一つは、自律神経のバランスが乱れた結果、不安や緊張といったストレスが自律神経や液性因子(ホルモン、サイトカインなど)を介して腸の異常な蠕動運動を引き起こしているもの。
もう一つは神経伝達物質「セロトニン」の影響です。精神の安定に関わるセロトニンは約90%が腸内で作られますが、腸内フローラのバランス崩壊により産生過多が起こると自律神経に影響を与えます。
ストレスによって腸のセロトニンが過剰に分泌されると腸内のセロトニン受容体と結合し蠕動運動に異常が発生。それにより腸の不快感、腹痛、下痢などを引き起こされると考えられています。
腸と脳は「腸脳相関」と言われるほど密接な関わりがあり、自律神経やホルモン、サイトカインを介し、伝達しあっているため過度の緊張やプレッシャー、ストレスなどが引き金となり、症状が引き起こされます。
この自律神経が実は腸内フローラ(腸内細菌叢)と深い関係にあることが近年の研究でわかってきました。安定した自律神経のバランスを維持できるか否かは、腸内フローラ(腸内細菌叢)次第といえるのです。
過敏性腸症候群(IBS)の症状
「2ヶ月以上、下痢もしくは便秘が続いている」「下痢と便秘を交互に繰り返す」「不安や緊張といったストレスによって急に激しい腹痛に襲われる」「ガス漏れが続く」「人が背後にいるとガスが止まらなくなる」「急にトイレに行きたくなるので外出が不安」「ストレスを感じやすい」「頭痛が続く」「慢性的に吐き気がある」「うつっぽい」
これらの症状が2ヶ月以上続きながらも、器質的異常が認められない場合は過敏性腸症候群(IBS)に罹患している可能性があります。
症状は便の形状によって便秘型、下痢型、混合型(便秘と下痢を交互に繰り返す)、分類不能型の4タイプに大別されます。
下痢型
男性に多く、少しでもストレスを感じると下痢を引き起こします。腹痛を伴うことが多く、便に粘液が混ざることもあります。
便秘型
女性に多く、ストレスにより便秘が続きます。硬い便やコロコロ便が多いです。
混合型
腹痛及び腹部の違和感、下痢と便秘が複数日間隔で交互に現れる(交代性便通異常)
分類不能型
上記いずれにも当てはまりませんが、便の形などで判断します。
また、ガスがずっと漏れ続ける症状も見られ、背後に人が立つとかならずガスが漏れてしまうというガス型の患者さんもまれに見られます。
過敏性腸症候群(IBS)のこれまでの一般的な治療方法
過敏性腸症候群(過敏性大腸炎)の治療方法としては食事療法、運動療法、薬物療法、心理療法が一般的です。
過敏性腸症候群の食事療法・運動療法
過敏性腸症候群(過敏性大腸炎)を改善するためにまず行いたいのは、生活習慣の見直しです。食事においては食べ過ぎや脂質過多、刺激の強い食生活を避け、食事の時間をなるべく規則正しくするようにしましょう。
お腹のことを考えた調理法、食材を取り入れることも大切です。またガス型の方は腸に空気を送り込んでしまいやすい早食いや、すすりながら飲む熱い飲料、炭酸飲料はなるべく避けることも改善に繋がります。便秘型の方は、便意のタイミングを逸しないよう生活リズムを工夫してみましょう。
飲酒や喫煙も控えめに。また質の良い睡眠を取るよう心がけ、適度な運動を取り入れるようにしましょう。運動はストレスマネジメントにおいても大変意味があります。無理のない範囲で体を動かすことも治療への第一歩となります。
過敏性腸症候群の心理療法
そして過敏性腸症候群(IBS)はストレスなど心因により症状があらわれる病気のため、精神面でのケアは大変重要です。
不安やストレスの原因となっているものを突き止め、解消していくことは治療のために欠かせませんし、医師との相談の上必要に応じてカウンセリングやメンタルクリニック、心療内科、あるいは精神科での受診も有効と言えます。不安解消の薬物療法として抗うつ剤や抗不安剤などが処方されることもあります。
過敏性腸症候群の薬物療法
生活習慣の見直しだけでは改善へと至らない場合、薬物療法が使われます。
- 整腸剤
- 高分子重合体
- セロトニン3受容体拮抗薬
- 抗コリン薬
- 粘膜上皮機能変容薬
- セロトニン4受容体刺激薬
- 漢方
- 便秘薬
- 止瀉薬 など
病院で処方されるものもありますが、市販の薬と同様のものが処方される場合もあります。薬物療法には副作用のリスクが常に伴うこと、また根本的な改善には至らずに繰り返すケースが多くなっています。
過敏性腸症候群(IBS)の最新の治療法とは
生活習慣の見直しや心理療法、薬物療法によって一定の改善はあるものの、症状が長期に及ぶ場合は根本的な治療効果が出ていないことも事実です。
そこで過敏性腸症候群(IBS)の最新の治療方法として注目を集めているのが、腸内フローラ治療です。患者さんがどのような腸内細菌叢(腸内フローラ)であるかを腸内フローラ検査で確認し、検査結果から適切な乳酸菌をマッチングさせることで腸内フローラのバランスを整えます。
腸内環境が整えば自律神経の乱れも改善するため、長年悩まされていた過敏性腸症候群の症状から根本的な回復に至るケースが既にかなりの数に上っています。また、口腔内の金属が原因のアレルギーやガルバニー電流なども自律神経に悪影響を与えるため、それらの有無を確認して原因と考えられる場合は取り除いていくことも効果的な治癒に繋がります。
一般の診療で行われる血液検査や内視鏡検査では一人の体に1200種 100兆個存在すると言われる腸内フローラを検査することはできません。当クリニックでは腸内フローラ検査と口腔内金属アレルギー検査をいち早く取り入れ、数多くの治療実績を上げております。過敏性腸症候群の送り返しにもうさよならしませんか? ぜひ一度当クリニックにご相談ください。
監修:長岡 美妃
現代医療に携わりながら病の根本原因、医療本来の在り方、さらに真の社会の在り方、女性の生き方を追求している医師。 東京女子医大消化器外科センターにて癌の外科治療に従事。
その後、福岡の秋本病院にて緩和ケアセンター長として多数の方の精神的苦痛を和らげてきた経験をもつ。 内視鏡の技術にも定評がある上、コミュニケーション能力が非常に高く、患者様からの信頼がとても厚い。 著書:『「真の」医療者をめざして』 他